三度目の監督交代を経て蘇ったヘルタ・ベルリン
今季三度目となる監督交代を経て、ヘルタ・ベルリンが不死鳥の如く蘇った。降格の二文字もちらついていたチームは、いまやヨーロッパリーグ出場権獲得も夢ではない9位まで浮上した。リーグ戦再開後、2勝1分けと好調の首都クラブに迫る。
長らくチームを率いたパル・ダルダイ監督が退任し、アンテ・チョヴィッチ新監督とともに新たなスタートを切った今季のヘルタ・ベルリン。しかし、新体制はまるで軌道に乗らずに、第9節のホッフェンハイム戦から4連敗を喫する。このタイミングでフロントは指揮官交代を決断。元ドイツ代表監督のユルゲン・クリンスマンに再建を託した。
大きな話題をさらったこの人事の効果はすぐに表れる。快足ウイングのドディ・ルケバキオとジャファイロ・ディルロサン、大型CFデイヴィー・ゼルケらチョヴィッチ監督時代には影が薄かった選手が躍動し、コンスタントに勝ち点を拾えるようになったのだ。だが、第21節のマインツ戦後に“事件”が起きる。クリンスマンが突如辞任したのである。
跡を継いだアレクサンダー・ヌーリ監督は初戦こそ勝利を収めるも、守備組織の整備に失敗。新型コロナウイルスの影響によるリーグ戦中断までの4試合で11失点(1勝2分け1敗)を喫し、チームは降格圏まで勝ち点6差の13位まで転落してしまう。もはや「待ったなし」の状態になったクラブは今季三度目となる監督交代に踏み切り、ブルーノ・ラッバディアに後を託した。
この決断は吉と出た。新体制発足から間もないにもかかわらず、チームはホッフェンハイムにアウェーで3-0、ウニオン・ベルリンとのダービーで4-0、ライプツィヒに敵地で2-2と目覚ましい結果を残しているのだ。昇降格プレーオフに回る16位に勝ち点8差をつけ、むしろヨーロッパリーグ出場権の獲得も夢ではない9位にまで順位を上げた。
ラッバディア効果の最たるものの1つが、ヴェダド・イビシェヴィッチの復活だ。モチベーターとしての手腕に優れる新監督は、選手個々と綿密にコミュニケーションをとっていくなかで、チーム随一の経験を誇るFWに不振からの脱却プランを提案。これに前向きな姿勢で応じた主将は第26節に1ゴール、第27節に1ゴール2アシストと覚醒している。
また、攻守どちらの局面でも常にアグレッシブで、とりわけキックオフから15分間のインテンシティーの高さが特徴的なラッバディア・イズムが早くも浸透しつつある。さらには今冬に加入した若手アタッカー、マテウス・クーニャの躍動(第24節から4試合連続ゴール)など明るい話題が少なくない。
かつてハンブルガーSVやヴォルフスブルクを降格の危機から救っただけでなく、チームを一つ上の次元に引き上げた実績を持つ“残留請負人”のもと、首都クラブが佳境に入ったブンデスリーガで一大旋風を巻き起こすかもしれない。
文=遠藤孝輔