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育成のエキスパートによるGK解説③ルーカス・フラデツキー

長年にわたってケルンU-21および育成部門GKコーチを務めたエキスパート、田口哲雄氏がブンデスリーガで活躍するGKの特徴や凄みを解説する当連載。第3回はレーバークーゼンの守護神を務めるフィンランド代表のルーカス・フラデツキーに迫る。

2015年夏、パリ・サンジェルマン(PSG)に移籍したケヴィン・トラップの後釜としてアイントラハト・フランクフルトに加入したルーカス・フラデツキー。当時は多くの人が「だれ?」と首を傾げたはずだ。フィンランド代表の経験を有していたものの、ドイツまで届くほどの目立った活躍はない。PSGからお声が掛かったほどの実力者が抜けた穴を埋められるのか。そう思った人もいるだろう。がしかし、蓋を開けてみるとなんと優秀なGKであることか。

GKを評価する上で欠かせない要素の一つは「安定感」だ。フラデツキーの強みはまさにその点にある。ファンの度肝を抜くような派手なセーブは多くなく、圧倒的な存在感があるわけでもない。身長192cmとサイズは十分あるものの、目の前で見てもユニフォームがカーテンのように垂れ下がって見えるほど、胸板の厚みや腕の太さは水準以下の印象を受ける。

しかしながら、しっかりとクロスを弾き出し、左右両足でボールを器用にさばける技術を備える。タイミングよく間合いを詰め、足と腕を大きく開いてブロックする1対1の対応も特筆に値する。際どいシュートに対しては身体をしっかり伸ばし切り、指先でボールを弾き出す。また、特徴的なのは腕をこれでもかというくらい振るキック前の助走である。彼は自身の身体的なポテンシャルをしっかり出し切る身体の使い方に秀でたGKと言える。

2010年代初頭、マークアンドレ・ テアシュテーゲンやベルント・レノら優秀な若手が台頭し、GK王国ドイツの面目躍如と思われたが、10年代後半になるとブンデスリーガにおける外国人GKが増加。FCバーゼル時代から欧州チャンピオンズリーグ(CL)などで活躍していたヤン・ゾマーボルシアMG)を例外とすれば、フラデツキーの活躍こそが今日まで続く「外国人GK」というトレンドの発端になったのではないか。

フランクフルトで3年を過ごしたフラデツキーは2018年夏、アーセナルへと去ったレノの後釜としてレーバークーゼンへ。レネ・アドラー、レノと歴代ドイツ代表が守った名門のゴールを任されるプレッシャーなど微塵も感じさせず、持ち前の安定感を武器に、新天地にすぐに馴染んだ。フラデツキー退団後のフランクフルトが穴埋めに苦慮し、結局、PSGからトラップを呼び戻して“元鞘”に収まったというのは少々皮肉だった。

さて、今年の夏にはレーバークーゼンにまた一人新たなGKがやってくる。3部のカイザースラウテルンで正GKを務めていたドイツU-21代表のレナート・グリルだ。アレクサンダー・ニューベルやマルクス・シューベルトが思ったような成長を遂げられていない今、彼がドイツ若手GKの旗頭とも言える存在だ。

フラデツキーもまだ老け込む歳ではなく、現在30歳とむしろ脂が乗り切ってくる一番いい時期を迎えている。引き続きレギュラーという立場で来季に臨むと思われるが、グリルとのハイレベルな定位置争いを注視していきたい。

解説=田口哲雄(JFAトレセンコーチ/元1.FCケルンU-21および育成部門GKコーチ)
文=遠藤孝輔

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