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育成のエキスパートによるGK解説①ヤン・ゾマー

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長年にわたってケルンUー21および育成部門GKコーチを務めたエキスパート、田口哲雄氏がブンデスリーガで活躍するGKの特徴や凄みを解説する新連載。第1回は長らくボルシアMGのゴールマウスに君臨するヤン・ゾマーを取り上げる。GKとしては小柄な部類に入る彼の強みとは?

2014年夏の加入以降、ヤン・ゾマーはボルシアMGのゴールを守り続けている。ケガによる長期離脱も、不調ゆえのレギュラー降格も経験していない。マルク・アンドレ・テア・シュテーゲンの後継者としてドイツにやってきたスイス代表の31歳は、いまや主将のラース・シュティンドル欠場時にゲームキャプテンを務めるほど絶対的な存在となっている。

ヴォルフスブルクでリーグ制覇を成し遂げたディエゴ・ベナリオという先輩はいたものの、ゾマーの活躍こそがブンデスリーガでスイス人GKが重宝されるようになった決定的要因だ。スイスにおけるGK育成は「GK大国」を自負するドイツのGKコーチたちから一目置かれるが、実際にゾマーのプレーからは細部まで行き届いた育成の成果が見られる。

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183センチとGKとしては小柄な部類に入るものの、ポジショニングとシュートストップの方向や判断がとにかく抜群で、プレジャンプ(シュートを打たれる直前にする小さなジャンプ)のタイミングばかり気にするGKが怠りがちなカットインに対しての細かなポジション修正も的確だ。なおかつそのタイミングの取り方にブレが生じない。

一見すると構えの姿勢が低すぎるが、かといって頭上を撃ち抜かれやすいという印象はなく、むしろ至近距離からの低いシュートや1対1の場面でその構えが効いているようだ。ブンデスリーガ第25節のドルトムント戦ではトルガン・アザールが叩きつけたヘディングシュートに対し、しっかりと地面を蹴ってその反発力をロスすることなく体を伸ばしきり、最後はしっかりと右手一本で横へ弾き出している。これこそまさにゾマーの良さを象徴するプレーだった。

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もちろん、足元の技術もしっかりとしており、ビルドアップに積極的に関わっている。また、その姿勢がチームに落ち着きを与えてもいる。サイズがネックとなってクロスへの対応が消極的になることもない。しっかりとした助走からダイナミックにボールにアタックしている印象だ。

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ちなみにボルシアMGは今昔を問わず小さめのGKが多いクラブだ。テア・シュテーゲンも決して大柄ではなく、現在の控えGKトビアス・ジッペルも身長180センチ。GKコーチのウーヴェ・カンプス(GKのクラブ史上最多出場記録を持つ)もまた小柄であることに関係するのかもしれない。

解説=田口哲雄(JFAトレセンコーチ/元1.FCケルンUー21および育成部門GKコーチ)
文=遠藤孝輔