Summary

  • ハンブルガーSVの17歳アープが出場3試合で2得点の活躍
  • 低迷が続くクラブの救世主として期待を一身に背負う
  • クラブ首脳とチームメートは加熱するフィーバーに慎重姿勢

ハンブルガーSVの救世主”と書いて“ヤンフィーテ・アープ”と読む。すい星のごとく現れたクラブ生え抜きの17歳は、その表現が大げさではないほど周囲から大きな期待を寄せられている。

9月30日のブレーメン戦でブンデスリーガデビューを果たしたアープは、先発デビューとなった11月4日のシュトゥットガルト戦でダメ押し弾をマーク。通算3試合目の出場にして早くも2点目を挙げ、チームに9試合ぶりの勝利をもたらした。

名門クラブの将来を背負う存在としてアープの期待値はうなぎ上りだが、マークス・ギスドル監督は加熱する“アープ・フィーバー”に対して慎重だ。シュトゥットガルト戦では試合後にスタジアムの裏口からこっそり帰宅させ、アープを待ち伏せしていた記者たちを煙に巻いた。「彼に対して高まる期待にブレーキをかけないと。当面、彼が取材対応しないことを理解してもらいたい」

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デビューから記録ずくめの17歳

2000年1月6日にハンブルク近郊のバート・ゼーゲスブルクで生まれたアープは、ハンブルガーSVのユースで育ち、2000年生まれの選手の先陣を切ってブンデスリーガデビューを果たした。第10節のヘルタ・ベルリン戦では途中出場からブンデスリーガ初ゴールをマーク。ソン・フンミン(現トッテナム/イングランド)が保持していたクラブの最年少ゴール記録を塗り替えている。

初先発を飾ったシュトゥットガルト戦では1トップとして好プレーを連発。先輩のアーロン・ハントは自身の経験と重ねて次のように話している。「フィーテは優れた才能の持ち主だ。これからもハードなトレーニングを続けていけばいい選手になれるだろうね。今は夢の中にいるような感じかもしれないけど、まだ17歳。学校など他に大事なことも頭にあるはずだ。僕らは彼に余計なプレッシャーをかけないようにしないと。僕自身、それはブレーメン時代に経験しているからね」

ブレーメンのユースで育ち、2004年に18歳でデビューを飾ったハントは、周囲から寄せられた大きな期待に応えることができなかった。だからこそ、アープには自分のようにつぶされてほしくないという先輩心があるのだろう。

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アープ育成プロジェクトが発動

ブンデスリーガでアープよりも若くして通算2点目を決めたのは、ドルトムントのクリスティアン・プリシッチとライプツィヒのティモ・ウェアナー(シュトゥットガルト時代に記録)だけ。いずれものちに強豪クラブの主軸へと成長を遂げたタレントだ。

残留争いの常連となっている近年の状況を考えれば、北の名門が17歳の若者に対して“救世主”と期待してしまうのも無理のないことなのかもしれない。だが、ハンブルクにとってアープの育成はクラブの命運が懸かった一大プロジェクト。過度にプレッシャーがかからないよう、大事に育てていく必要がある。

シュトゥットガルト戦の試合終了からかなり時間が経った頃、クラブは公式サイトを通じてアープの談話を掲載した。

「とてもいい試合だったし、やっと勝ち点3を取れたことがすごくうれしい。ゴールになったシュートは転がっている時間が長くて、ポストに当たるのではないかと思っていた。でも、ゴールに収まるとスタンドから大歓声が上がった。すごい瞬間だったよ。ここで大きなチャンスをもらい、トップチームの選手としてやっていけることをとてもうれしく感じている。正直に言えば、周りの騒ぎにはちょっと戸惑っているけど、今はサッカーだけに集中していきたい」

アープの急激な成長ぶりにはシュトゥットガルト戦でアープの得点をアシストしたデニス・ディークマイヤーも舌を巻く。「最初こそプロチームのプレーに苦戦していたけど、練習を重ねるごとに体の使い方などがうまくなっていった。彼は正確で強力なシュートも持っている。僕もほしいくらいだよ」

大切なダイヤの原石が一人前になった時、ハンブルクにはきっと明るい未来が待っているはずだ。

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