ハノーファーの原口元気にインタビュー - © Oliver Hardt/Bundesliga/DFL
ハノーファーの原口元気にインタビュー - © Oliver Hardt/Bundesliga/DFL
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原口「まだまだ成長したい」「日本をベスト16のその先へ」

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新天地を求めてハノーファーに移籍した原口元気は、ワールドカップ・ロシア大会に出場した唯一のハノーファー所属選手として、大きな期待を背負ってチームに合流した。自らに「10番」というプレッシャーかけて。ハノーファーで今季2度目のメディアデーが行われた9月18日、移籍を決意させた監督の言葉やワールドカップ(W杯)での経験、サッカー人生のこれまでとこれからについて、原口は噛みしめるように言葉を紡いだ。

「僕たちはサッカーがしたい」

原口のドイツ挑戦は、W杯ブラジル大会のメンバー落選という結果を受けた2014年に始まった。ヘルタ・ベルリンに浦和から完全移籍した原口は、再び巡ってきたワールドカップ・イヤーである2018年、今度はW杯出場メンバーとしてハノーファーへの移籍を決める。

ーー今シーズン、ハノーファーへ移籍されました。どのような気持ちで新天地を求めたのでしょうか?

原口 W杯ロシア大会を終えたら、新しい目標を探さなければいけないという中で、ハノーファーに来れば新しい挑戦ができると感じました。ハノーファーというクラブが僕にすごく攻撃的な役割を与えてくれること、アンドレ・ブライテンライター監督と話をして移籍を決めました。

ーー監督は、原口選手にどんな話をしましたか。決定打となったポイントは?

原口 監督と話をした中で、大きかったのは「僕たちはサッカーがしたい」ということ。「ただ前にボールを蹴るんじゃなくて、僕らはボールをつないでしっかりとしたサッカーがしたいんだ」という思いを話してくれました。

もう一つは、「僕のところに来れば、成長することができる」と監督が言ってくれたこと。僕自身も27歳という年齢ですが、まだまだ成長したいという思いがあって、監督が「もう1ステップ、2ステップ、選手として成長させられると思う」と言ってくれたことが、すごく響いた。その二つが僕にとっては決定打になったかなと思います。

アンドレ・ブライテンライター監督(ハノーファー) - AFP/Getty Images / Odd Andersen

背番号10を、自分で選びました

ーー原口選手にとっての初めて背負う10番には、どのような意味がありますか?

原口 僕自身に、大きなプレッシャーを掛けたいという思いがあって。というのも、ベルリンでも試合には出ていましたが、得点やアシストが少なかった。ハノーファーではそういう部分を伸ばしたい、ゴール前のクオリティーをもっと上げたい。そういう意味で、自分自身にプレッシャーがかかるように、背番号10を自分で選びました。

ーーハノーファーにはこれまでも日本人選手が所属していました。酒井宏樹、清武弘嗣、山口蛍と、現同僚である浅野拓磨。原口選手はこのクラブでプレーする5人目の日本人選手です。移籍前に、ハノーファーでプレーした経験のある選手とチームについて話すことはありましたか?

原口 彼らが、ここハノーファーで素晴らしい時間を過ごしていたということは知っていました。彼らと話す中で、この町はサッカーに集中できる環境があり、クラブはもっと大きくなりたい、もっと上を目指したいとすごく野心的な思いを持ったクラブだと聞いたので、魅力的だなと、僕の挑戦にぴったりな場所だと思いました。

ーー同じく今季からハノーファーに挑戦の場を移した浅野選手との関係は、どのようなものですか?

原口 そうですね。僕の方が年は上なので、どちらかというと僕の方がアドバイスをするような会話が多くはなるんですけど、彼自身すごくポテンシャルを持っている選手。本当に才能のある選手だと思うので、彼からも学ぶことが多いです。お互いが助け合いながら、僕ももっと彼が良い選手に成長するための助けの一つになれると思うので、ここハノーファーで二人ともいい時間を過ごせるようにしたいなと思っています。

W杯ベルギー戦で先制ゴールを決めた原口 - ODD ANDERSEN/AFP/Getty Images

あのゴールに、すごく大きな自信をもらいました

原口は、初めて出場したW杯で3試合に先発し、ベスト8をかけて激闘したベルギー戦では先制ゴールを決めた。このゴールは、原口にとってW杯初ゴールであっただけではなく、日本にとってW杯の決勝トーナメントで奪った史上初めての得点となった。日本サッカー史に残るW杯での経験について聞いてみると、原口はゆっくりと一言一言を噛みしめるように振り返った。

ーー実際にワールドカップを戦ってみた感触は?

原口 やはり、本当に素晴らしい大会でした。ベルギー戦ではゴールも決めることができて、あのゴールっていうのは、僕自身、すごく大きな自信をもらいました。この自信を持って新しいチームに来くことができたので、ここでまた新しいチャレンジをしたい。ハノーファーでしっかりいい時間を過ごして、このチームをもっと上に引き上げるような活躍をしたいなと思っています。

ヘルタ・ベルリン時代の原口 - ODD ANDERSEN/AFP/Getty Images

ーーご自身が、自分の強みだと思うこと。そして、今後の課題と認識していることについて教えてください。

原口 僕自身、一番得意なのは左サイド。ですが、日本代表では右サイドもやりますし、ボランチもトップ下もやったことがあります。ベルリンでは一番前もやったことがあり、ボランチよりも前のポジションだったらどこでもできるというのは、自分自身の良さだと思っています。

弱点といえば、ベルリン時代は数字が出なかった。ゴールまでの仕事が少なかったということについては、僕自身すごく不満に思っています。このハノーファーではその課題にチャレンジできる攻撃的な役割を求められているので、そこを伸ばしていくべき時期にあると思っています。

ーーベルリンに所属していた時の結果に満足されていないということですが、当時のことをどのように振り返りますか?

原口 僕をヨーロッパに呼んでくれたクラブですし、僕のヨーロッパでのキャリアにおける最初のクラブということで、サッカー以外の部分でも本当に多くのことを学びました。

サッカーについても、こっち(ドイツ)に適応するためにベルリンのすべての人が僕を助けてくれて、僕がブンデスリーガで成功するための基礎を身につけられた場所だと思っています。特に、まだドイツ語もわからない状態だった僕を、ベルリンの選手やスタッフがすごく助けてくれて、僕にとってはすごく思い出深い場所です。

- Bongarts/Getty Images

ーーブンデスリーガとJリーグの違いは感じますか?

原口 もちろん、浦和で育って、浦和で大きくなった選手なので、浦和のことは大好きなんですけど、やはりこっちに来てみると、レベルが違いました。本当に、ドイツに来た当初は自分自身に力が足りなくて・・・。このブンデスリーガというトップレベルのリーグの中で、なかなか自分の力を出せなかった。日本とドイツのレベルの違いっていうのは、本当にこっちに来てみて、初めて実感できたと思います。

ーー生活面でも日本とドイツでは違うこともあると思いますが、ドイツでの生活にはもう慣れましたか?

原口 日本での生活はドイツと比べるとなんというか慌ただしくて、犬と遊ぶところも少ない。ドイツでは時間がゆっくり流れていて、本当に自由というか、自由にみんなが時間を使っているような感じがします。僕自身は、今ではこっち(ドイツ)の方が生活しやすいし、好きな時間が流れていると感じています。

ーー休日はどのように過ごしていますか?

原口 僕ら夫婦は本当に犬を愛していて、その彼女(愛犬)が喜ぶ休日にすることが多いですね。ドイツには犬と遊べるところが多くて、湖に行って泳ぐとか、広いところに行って走り回ったり。僕らの犬が好きな場所で過ごす僕らの休日の日課ですね。

好きなドイツ語は、「Zweikampf」「Weiter」
ーーチームメイトとは、どの言語を使ってコミュニケーションをとっていますか?

原口 ドイツ語ですね。チーム内ではみんなドイツ語を使いますし、僕もピッチ内、チームメイトとコミュニケーションの際はドイツ語です。

ーー好きなドイツ語の表現はありますか?

原口 好きなドイツ語は、「Zweikampf(1対1の勝負)」「Weiter(まだまだ続けろ)」のような、士気を高めるような言葉。僕自身もよく使いますね。

もう一回、ワールドカップに出て、ベスト16を超えたい

ーー原口選手の、今季の個人的な目標は?

原口 もちろん、チームを勝たせ、成功に導くっていうのは一つのポイントです。個人的な目標としては、ゴール前での仕事を増やすこと。スコアポイントで10ポイントという目標を掲げています。もちろん、ブンデスリーガに簡単な試合はなく、簡単じゃないです。

ーーサッカー選手として日本を飛び越え、W杯にも出場され、夢を叶えてきた原口選手ですが、これからのサッカー人生における夢はなんですか?

原口 もちろん、このヨーロッパでもっと成長して、良いキャリアを築きたいというのが一つ。

もう一つは、やはりもう一回ワールドカップに出て、ベスト16を超えたい。その先に日本代表は行ったことがないので、その先に連れていくような活躍をしたい。

その二つが、ぼくの今の大きな夢かなと思います。

10月6日、ブンデスリーガ第8節のシュトゥットガルト戦で、今季初アシストを決めた原口。まずは、1ポイント。新天地での挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。

(インタビュー:2018年9月18日実施)