前半戦総括:ウニオン・ベルリン
ウニオン・ベルリンの本拠地アルテン・フェルステライは幻想的な雰囲気に包まれていた。12月23日に行われた恒例のクリスマスイベントに2万8000人が参加。無数のキャンドルがスタンドを彩り、ピッチは笑顔のファンで溢れ返っている。地元の高校生オーケストラによる伴奏で3万人弱が大合唱したクリスマスソングは、言葉で言い表せないような感動を呼び起こした。ウニオンの歴史的な2019年を締めくくるにふさわしいイベントとなったに違いない。
旧東ドイツの名門だったウニオンは今季、ブンデスリーガに参戦した「56番目」のクラブとして大健闘している。開幕前は降格候補と目されながら、昇格3クラブ中トップの11位でウインターブレイクに突入。開幕戦でライプツィヒに0ー4といきなり洗礼を浴びたものの、第3節に優勝候補のドルトムントを破る番狂わせを演じると、第10節に実現したヘルタとの歴史的なベルリンダービーを皮切りに3連勝と波に乗った。
当時首位だったボルシアMGを下し、バイエルン・ミュンヘン戦も接戦に持ち込んだ今のウニオンを侮るチームは、もはやブンデスリーガには存在しない。特にホームゲームにおけるパフォーマンスは目を見張るものがあり、前半戦に挙げた6勝のうち、実に5勝はアルテン・フェルステライで記録したものだ。
「家族の一員」という形容がぴったり当てはまる熱狂的なファンの後押しを受けるホームでは、前記したドルトムントやヘルタ、ボルシアMGに加え、今季好調のフライブルクなども打ち破っている。
戦術が斬新なわけではない。いかにも昇格クラブらしく、ベースは相手の良さを消す守備。敵陣からマンツーマンでビルドアップを妨害し、最終ラインに6枚の壁を構築して相手の攻撃を跳ね返す。ボール奪取後は鋭いサイドアタックやカウンターを仕掛け、ここまでチーム最多の8ゴールを挙げている主砲セバスティアン・アンデションにフィニッシュを託すのが定番。主将のクリストファー・トリンメルのプレースキックも攻撃の武器に挙げられる。
目標の残留に向けての課題は、ここまで1勝しか挙げられていないアウェーでのパフォーマンス改善だろう。2部3位とのプレーオフに回る16位との勝ち点差は「5」。決してセーフティリードというわけではない。クラブにすべてを捧げてくれるファンと醸成するウニオンらしい「一体感」を最大の拠り所に、2020年も素晴らしい戦いを継続できるか注目だ。
文=遠藤孝輔