ドイツ西部のライン川沿岸の地域、ラインラントには4季ではなく5季がある。その5季目とは、言わずと知れた『カーニバル』で、かの地では目下、ハイライトであるストリートカーニバルの真っ最中だ。本稿では、この地域に位置する武藤嘉紀の本拠地マインツ、そして大迫勇也のケルンと、カーニバルとの関わりを紹介する。

カーニバルとは・・・?

カーニバルに当たる日本語は『謝肉祭』で、カトリックの、主に肉食を断つ『ファスト(断食)』の前に「今のうち思う存分楽しもう!」と行われる、古くから伝わるお祭りだ。ラインラントでは毎年11月11日、このカーニバルが幕を開ける。それから約3ヶ月間は、週末ともなると街中の飲み屋で仮装した人たちが集まる光景が日常だ。そして、そのフィナーレを飾るストリートカーニバルが、イースター(復活祭)から約40日前に当たる1週間(2016年は2月4日から9日)にわたって行われるのだ。仮装した人々が街を練り歩き、音楽を奏でながら大通りを行く『ツーク』と呼ばれる山車や行列から投げられる、お菓子や切花などが飛び交う。

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カーニバル・ダービー

ドイツ3大カーニバル都市といえば、ケルン、マインツそしてデュッセルドルフだ。よって、ブンデスリーガでケルンとマインツが対戦すると、カーニバル・ダービーということにな る。カーニバルが開幕した直後の11月21日、ブンデスリーガ第13節で両チームが対戦したが、試合のほうはカーニバルのような派手さはない、スコアレスドローであった。次に両者が相対すのは、4月に行われる第30節だ。

カーニバル用ユニホーム

その両チームの着用したユニホームに『異変』を感じた方もいたことだろう。マインツは1月29日、第19節のメンヘングラートバッハ(ボルシアMG)戦を、袖の部分にいつもの赤と白のほか、青と黄色の入ったカーニバル仕様のユニホームで戦い1-0と、完封勝利を収めた。この4色の組み合わせはマインツのカーニバルを象徴するものであり、元をたどれば革命を表すという説もある。確かに今季のマインツは順位表に革命も起こせそうな位置に着けている。「ヘラウ、ヘラウ、ヘラウ!」(マインツ版カーニバルの掛け声)

ケルンのユニホームの『異変』には、思わず誰もが目をこすり直しただろう。第18節のシュトゥットガルト戦でお披露目となった、ことしのカーニバル用ユニホームは、ケルンの伝統を誇るカーニバルクラブ『ローテ・フンケン』の制服からデザインされ、スポンサーのロゴまで逆さになっていた。カーニバルの仮装は、市民たちを日ごろのうっ憤からも開放してきた。古くから人々のコスチュームには、社会や政治を風刺したものが多かったのだ。1823年に発足した『ローテ・フンケン』も、当時ケルンを統治していたプロイセン王国の軍事主義をからかう意味で、元来ケルン市民の生活を守ってきた兵隊の制服で仮装し、パレードを行ったのだ。ブンデスリーガ1部で着実に力を伸ばし、市民に喜びを与えているケルンに、ことし、このユニホームを着用する栄誉が与えら得たのだ。「アラーフ!」(ケルン版カーニバルの掛け声)

バラの月曜日

そんなストリートカーニバルのメイン中のメインイベントは、『バラの月曜日』(Rosen Montag)と呼ばれる。期間中の月曜日に、巨大な山車をはじめ、騎馬隊や鼓笛隊などが、大変にぎやかに町の大通りを次から次へと通過していくのだ。山車からお菓子や切花を投げるのは、その町の主要なカーニバルクラブの人たち。ブンデスリーガのクラブも例外ではなく、パレードの車上に選手や監督の姿を見つけると、群集からの「カメレー、カメレー!(お菓子を投げて!)」の声も一段と大きくなる。ところが、ことしの『バラの月曜日』のパレードは、暴風警報のため、マインツとデュッセルドルフで中止となった。非常に珍しい事態だったが、各都市の責任者は「安全が最優先だ」と説明した。ケルンだけは、旗と大型の山車、そして馬はなし、という制限つきでパレードを決行。見上げると青空が微笑んでいた。