第12節ウニオン・ベルリン戦、先発した石原(左)は45分で交代。ゲッツ監督は「コミュニケーションが取れなかった」とドイツ語力を交代理由の一つに挙げた(©Imago)
第12節ウニオン・ベルリン戦、先発した石原(左)は45分で交代。ゲッツ監督は「コミュニケーションが取れなかった」とドイツ語力を交代理由の一つに挙げた(©Imago)

「言葉は自信になる」

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サッカー選手にとって必要な語学力とは?

現在は英語で意思疎通

ドイツのサッカーリーグにおいて日本人選手の姿を見かけることは、今やさほど珍しくはなくなった。現在、ブンデスリーガに8人、ブンデスリーガ2部には3選手が所属する。3部以下のリーグでプレーする日本人選手も年々増える一方だが、彼らがまず突き当たるのが言葉の壁だ。ドイツ移籍から4カ月目の(アウエ)も例外ではない。

欧州では一般的に小学校から英語を中心に外国語教育が始まり、高校卒業のころには日常会話以上のレベルで話せるようになる。そういった環境で育った人間にとっては、ドイツでも英語でコミュニケーションを取ることが当初から可能である。また、アルファベットに馴染みもあり、文法や単語の類似点も多いことから、必要最低限レベルのドイツ語習得に要する期間は長くて1~2年といったところ。一方、島国で生まれ育ち、中高6年間英語の授業を受けても話せるのは日本語のみという状況が当たり前の日本人にとっては、ドイツ語はなかなか高きハードルのようだ。


日本人選手の中でもっともブンデスリーガでの経験が長いのは、9月初旬に5年在籍したウォルフスブルクからニュルンベルクへ移籍した日本代表MFだ。入団会見では通訳がつきながらも、自らドイツ語での質疑応答をこなした。ドイツ在住6年目という事実を考えれば驚異ではないにしても、日本人としては異例のことである。

逆に最もドイツ歴が浅いのは、今夏から2部アウエに移籍した石原だ。ドイツへ来て4カ月目に入ったが、やはり言葉での苦労はまだまだ多いようだ。石原はことし1月にモンテネグロ1部リーグのFKムラドスト・ポドゴリツァへ加入し、初の海外生活をスタートした。現地の通用語はセルビア語、英語はほとんど通じない。しかし「ずっとモンテネグロにいるつもりはなかった」ため、夏にアウエ加入が決まるまではセルビア語よりも英語の勉強に時間を費やした。そのかいあって、今のところチームメートや監督とのコミュニケーションはほぼ英語で成立している。

ドイツ語力理由に交代


だが10月27日の第12節ウニオン・ベルリン戦、先発した石原は45分で交代となり、ゲッツ監督からは「タクとはコミュニケーションが取れなかった。もっとドイツ語を理解できるようにならなければ」と、交代理由の一つとしてドイツ語力を指摘された。さらについ先日、「来年1月以降、練習中にドイツ語以外の言語を使ったら罰金」と言い渡されてしまった。冗談か本気かはさておき、語学力の向上を指揮官が求めていることは確かである。

8月から語学学校に週3回通っている石原だが、文法が複雑なドイツ語は「難しい」と困惑顔だ。それでも3カ月が経過した現在、テーマが絞られていれば大雑把には理解できる程度にまでレベルアップはしている。最近では口頭で伝えられる練習メニューの内容が、英語で説明されずとも分かることも増えた。実際にサッカーをする上で必要な語学力については次のような意見だ。

「ポジションやプレースタイル、レベルによって変わると思う。前とかサイドはまだなんとかなる部分はあるけど、真ん中の選手はディフェンスとか指示を出さないといけないから、言いたいことが言えないといけないし。後ろとか真ん中になればなるほど、せめて聞き取りは完ぺきにできないと。語学力はあればあるだけ困らないと思います」。

試合中に必要性を実感


サッカーのレベルに比例して求められる語学力も高くなると、特に実感するのが試合中だ。「相手のレベルも高いから、考えてる時間がない」と、瞬時の理解力の必要性を強調する。

前述の長谷部の入団会見の様子を見て、感嘆したという石原。時間があれば予習復習をし、インターネットでドイツ語講座やニュースを観るなど勉強の仕方にも工夫をこらす。監督からは「長谷部のようになれ」と言われているという。言いたいことが伝えられるようになれば気後れもせず、プレーに好影響を与えるだけでなく日常生活でのストレスも減少する。「ドイツに来てから毎回もどかしさがあるけど、言葉が身につけば自信になる」と、努力の成果をピッチ上で発揮するため、ドイツ語習得に励む日々は続く。