左から新加入のピエールエメリック・オバメヤン、ソクラテス、クロップ監督を挟んでヘンリック・ミキタリヤン
左から新加入のピエールエメリック・オバメヤン、ソクラテス、クロップ監督を挟んでヘンリック・ミキタリヤン

今季もエンジン全開で

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ブンデスリーガ今季みどころ

ゲッツェ代役の攻撃コンビ

ドルトムントは、ゲッツェを宿敵のバイエルン・ミュンヘンへ失うというショックからの立ち直りを見せている。今夏の大型補強のおかげでコマが増えただけでなく、タイトル獲得への新たな渇望が生まれたようだ。成功への秘けつは昨季までと同様、エンジン全開のサッカーとプレッシングだ。

昨季チャンピオンズリーグ決勝で敗れてすぐ、バツケ社長は気持ちを切り替えた。試合後のパーティーでは「最低でも今季同様の攻撃力を備えたチーム」を新シーズンへ向けて作り上げると公言したのである。


プレシーズンにその言葉は実行へと移された。ゲッツェの退団にもかかわらず人員的にはアップグレードされたと言えるが、それなりに投資もした。シャフタール・ドネツク(ウクライナ)から獲得したアルメニア代表の攻撃的MFヘンリック・ミキタリヤンは、おそらくゲッツェの代役として考えられた選手だ。攻撃でのもう1人の大型補強がピエールエメリック・オバメヤン。いずれの選手も一発でトップクラスの印象を残した。ミキタリヤンは熟練した技術や敏しょう性に長けたゲームメーカーであるだけでなく、際立った得点力も持ち合わせる。ガボン代表のオバメヤンは足が速く、サイドでも中央でもプレーできるFWとしての役割を確保した。

ミキタリヤンは足首じん帯の負傷でプレシーズン4週間をチームから離れて過ごすことになり、敵地でのリーグ開幕節、アウクスブルク戦も欠場濃厚だ。チームにはやや痛いニュースだが、この移籍が意味するものは明らか。層を厚くし、攻撃の選択肢を増やすのが狙い。クロップ監督は「うちのレベルアップをしてくれるような、チームが必要とする選手を獲得した」と語っている。

ドルトムントもローテーションへ


昨季はFWレバンドフスキへの依存度が高すぎ、シーバーはそのバックアップとしての期待にまったく応えられなかった。だが今季は違う。レバンドフスキが欠場または不調に陥るようなことがあっても、クロップ監督にはハイレベルの代役がそろっている。全体的に、どのポジションでも可能性が広がり、戦術的にもよりフレキシブルに戦えるようになる。さらにブンデスリーガ、DFB杯、CLという3大会に参加する各選手への負担も軽減される。「選手たちはたまにベンチに座ることもあると学ばなければ」と、監督は今季ローテーションを多用することを予告している。

レベルの上昇、定位置競争の激化、選択肢の増加。これらの観点にはソクラテスの移籍も含まれる。フメルスとズボティッチという安定した両センターバックにプレッシャーをかけ、ディフェンスラインのポジション獲りでは一歩も譲っていない。右サイドバックもできるソクラテスはDFピシュチェク(腰の手術で約半年の欠場)の穴埋めにもなるかもしれない。ただこの位置には、オールラウンダーのグロースクロイツを使うという選択肢もある。

主に中盤が拡大したメンバー層


左サイドバックのシュメルツァーのバックアップ要員だけが、今季も獲得されなかった。この位置以外では高いクオリティーで構成されているチームにおいては、唯一の穴である。供給過剰となっているのは攻撃ポジションとCBだけではない。特に選手があふれかえっているのが守備的MFだ。ギュンドアン、スベン・ベンダー、シャヒン、ケールの4選手がダブルボランチのポジションを争う。

シャヒンはいわゆる「第2のサブ」とされている。レアル・マドリードからドルトムントへ復帰し半年間を過ごした今、「並外れた能力」(クロップ監督)を発揮し先発入り回数を増やすことを狙っている。監督にとってはぜいたくな悩みであるが、いっぽうで4-3-3システムを採用すれば最大限のフレキシブルさをもたらすメリットもある。

クロップ・サッカーの持ち味 - 走力、プレッシング、対人プレス


さらにチームを支えるのが、エリック・ドゥーム、ヤニック・バンドフスキ、ヨナス・ホーフマンといったユース世代である。下部組織の選手を使うことをクロップ監督はいとわない。「トップチームへの道は簡単だ」と話し、彼ら若手の存在はしっかりと気に留めている。基本的な前提条件は、クロップ監督のサッカースタイルを内面化すること。つまり高い走力、アグレッシブなプレッシング、徹底した対人プレス、素早い切り替えだ。これは監督がドルトムントで指揮を執り始めてから常に教え込んできたもので、過去3年で3つのタイトルとCL決勝進出へ導いた、いわゆる「エンジン全開サッカー」のことだ。

昨季はこうした要素すべてが、監督の満足いくよう常に実行されたわけではなかったため、批判もされ、改善のきっかけにもなった。集中力にも疑問符がつく。以前はリーグ最強であったディフェンスが昨季は42失点と、問題を抱えた。特に相手のセットプレーによる失点率は高く、ほぼ3分の1はFKまたはCKから決められている。この欠陥はまだ完全に克服していない。今夏の強化試合でも時折集中力を欠き、セットプレーからゴールを決められた。

ツォルクSD「素晴らしいスタートを」


ユルゲン・クロップ監督を知る者なら、同監督がこうした問題に取り組み最高の結果を模索していることに驚きはしない。これは新シーズンでの全般的な目標でもある。「すべてを望まなくては、何も手に入ることはない」。クロップ監督のモットーだ。具体的には「最低でもCLグループリーグ突破とブンデスリーガ3位以内」というのが表向きの目標だが、実際には「どこでも勝ち進んでトップでいたい」と監督は言う。

特にブンデスリーガでは昨季のように序盤からバイエルンに離されるのは避けたいところ。ツォルク・スポーツディレクターも「開幕から目を覚ました状態で勝ち点を獲得したい。素晴らしいスタートを切りたい」と明確にその目標を口にしている。

ディートマー・ノルテ(Dietmar Nolte)

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