Summary

  • ホッフェンハイム躍進の立役者、クラマリッチ
  • 昨季はシーズン途中に加入してチームを残留に導く
  • 今季はここまでチームトップの15ゴールをマーク

1年半前から続くホッフェンハイムの躍進は、アンドレイ・クラマリッチが歩んできた道と完璧に合致する。チームの好調は選手全員の働きによるものだが、今季のクラマリッチは15ゴール8アシストを記録してユリアン・ナーゲルスマン監督が作り上げた“パズル”の重要な1ピースとなった。そしてクラブは今、2008/09シーズンの7位を上回る成績でシーズンを終えようとしている。

キャリアの転機となったシーズン途中の移籍

クラマリッチは2016年1月にレスター(イングランド)からローン移籍でホッフェンハイムにやって来たが、当時から全く無名の選手というわけではなかった。母国クロアチアのディナモ・ザグレブでは、ユース時代にクラブ記録となる450ゴールをマーク。リエカでは2シーズンで公式戦55ゴールを叩き出した。

そして2015年1月、レスターのクラブ最高額となる900万ポンド(当時のレートで約14億円)の移籍金で渡英。その時点では英国の労働許可証取得に必要な条件を満たしていなかったが、レスターが「特別な才能の持ち主」であると主張して特例を認めさせたほどだった。

クラマリッチにはチェルシーも興味を示していたが、「出場機会が少なくなる」との理由でこれを拒否。厚い信頼を寄せてくれたレスターへの加入を選んだ。ところが加入2年目の2015/16シーズン、チームがリーグ優勝に向けて快進撃を続ける中、クラマリッチは定位置を確保することができないでいた。リーグ戦出場が2試合では、チームが優勝してもメダルをもらうことさえできない。そんな彼に救いの手を差し伸べたのがホッフェンハイムだった。

シーズン途中の移籍にはリスクが伴う。ましてや、優勝争いをしていたチームから成績不振のチームへの移籍である。そんな状況でいきなり本領を発揮するのはサッカーの世界では奇跡に近い。だが、クラマリッチは奇跡を起こした。ウィアゾル・ラインネッカー・アレーナに到着すると、「自分のやるべきことをして残留に貢献したい」という入団会見での言葉どおり、リーグ戦15試合で5ゴール4アシストを記録。見事にクラブを降格の危機から救って見せた。

© gettyimages / Adam Pretty

ホッフェンハイムをヨーロッパの舞台に導く

その数カ月がクラブにとって、そしてクラマリッチにとってさらなる飛躍の土台となった。昨年5月にホッフェンハイムとの4年契約にサインして以来、クラマリッチはその才能を発揮し続けている。自信に満ちたプレーは、元クロアチア代表監督で現在はアイントラハト・フランクフルトを率いるニコ・コバチや、1998年のワールドカップ得点王ダボル・シュケルを彷彿とさせる。

クラマリッチはホッフェンハイムの攻撃力を向上させ、それがチーム躍進の引き金となった。アレクサンダー・ローゼンSDは契約を交わした際、「チームの攻撃に新たな推進力を与えてほしい」と期待を寄せていたが、ここまではローゼン氏の期待をはるかに上回る結果が出している。

クラマリッチの活躍により、ホッフェンハイムは欧州チャンピオンズリーグ(CL)の本戦出場へあと一歩のところまで来た。最終節でドルトムントを上回ることができればCLストレートインが確定。仮に4位で終わったとしても、プレーオフを勝ち上がることができればヨーロッパ最高峰の舞台に立つことになる。

シーズン序盤、クラマリッチは「ヨーロッパの強豪相手に自分の実力を試したいか?」との問い掛けに対して「ホッフェンハイムにはポテンシャルがある。でも謙虚さは必要だ。『お願い!』だなんて言ってはいけないよ」と話していた。だが、今の彼になら“願い事”をする権利があるはずだ。

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