今夏にマンチェスター・シティからドルトムントへ加入した17歳のサンチョ - © © gettyimages / Ronny Hartmann
今夏にマンチェスター・シティからドルトムントへ加入した17歳のサンチョ - © © gettyimages / Ronny Hartmann

プレミアリーグの若手有望株がブンデスリーガへ移籍する理由

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ビートルズはハンブルクのストリートやステージでファンを引きつける術を磨き、世界的なヒット曲を生み出す音楽の下地を作った。その後、ケビン・キーガンが同じ土地で輝きを放ち、ドイツのサッカーファンを熱狂させた。そして今、将来有望な若者たちが成長の舞台を求めてイングランドからドイツに次々とやって来ている。新たな侵攻の始まりだ。 ブンデスリーガが若手の育成に優れているという評判は、もはや新しいものではない。だが、アメリカ出身のクリスティアン・プリシッチ(ドルトムント)を除けば、成長する若者のほとんどは地元ドイツ出身の選手に限られていた。しかし、今では多くのイングランド人がステップアップのためのステージとしてブンデスリーガを選んでいる。当サイトではその理由を探ってみた。

ガラスの天井

世界中の名だたる選手たちが集まるイングランドのプレミアリーグは、エキサイティングで熱狂的だという評判を得ている。サッカーファンにとっては天国のような場所だが、地元の若者にとっては晴れ舞台でプレーするという夢の実現は極めて難しいものになっている。

UEFAの調査によると、プレミアリーグでプレーする選手の70%は外国籍選手で占められている。所属クラブが大きければ大きいほど、トップチームへの道は険しい。また、FIFAの公式データを管理するスイスのスポーツ研究国際センター(CIES)によれば、アーセナル、マンチェスター・シティ、チェルシーは、イングランド出身の選手にそれぞれ23%、17%、16%の出場時間しか与えていないという。

一方、ブンデスリーガでは国外から来ている選手の割合は49%に過ぎず、若い選手にも実力を伸ばし、ステップアップを果たすチャンスがある。イングランドの若手から大舞台でプレーするチャンスを奪うような「ガラスの天井」は存在しないのだ。今夏に行われたUー21欧州選手権を見ればその違いは明白だ。イングランド代表の場合、選手全体のプレミアリーグ出場数は合計で200試合強だった。それに対して、優勝したドイツ代表のブンデスリーガ出場数は、本来のレギュラークラスがA代表としてコンフェデレーションズカップに出場したにもかかわらず合計1000試合を超えていた。

イングランドの若手はたびたび、トップチームのスター選手と一緒に練習できると口にするが、ドイツでは少し事情が違う。今夏、アーセナルからウォルフスブルクに移籍したカイルン・ハインズは、マリオ・ゴメスとの写真をSNSに投稿し、「レジェンドがチームメートになった」とコメント付きで紹介した。ハインズにとって、ゴメスはトレーニングの相手をしてくれる憧れの存在ではなく歴としたチームメートなのだ。

クロップ監督とドイツ・コネクション

サッカーの選手や監督は習慣にとらわれがちだ。自分が慣れ親しんだことや知っていることに信頼を寄せる傾向にある。そう考えると、リバプールのユルゲン・クロップ監督がライアン・ケントをフライブルクへ期限付き移籍させたのも理解できる。

ドルトムントの元指揮官は、将来的にケントがアンフィールドのスター選手になれる素質があると絶賛していた。監督自身がフライブルクのこと、そして率直で明快な思考を持つクリスティアン・シュトライヒ監督のことをよく知っていたからこそ、彼は将来有望なケントをフライブルクに預けたのだろう。もし、クロップ監督がスペイン人であれば、ケントはビジャレアルへ移籍していたかもしれない。

クロップ監督はシュトライヒ監督について、「常に考えることを仕向ける人物」と語ったことがある。20歳のケントにも同じ影響を与えてくれることを望んでいるはずだ。ケントが新たなサッカー観を得ることが、リバプールの将来にとって良い結果をもたらすと信じているのだ。

アーセナルからウォルフルブルクに加入したハインズのケースは、一見すると冒険のようにも思える。しかし、19歳のハインズにとってはよく知る指揮官との再会だ。ウォルフスブルクのアンドリース・ヨンカー監督はアーセナルのユースアカデミー時代にハインズを指導したことがある。「アーセナルで常に僕を支えてくれた。僕を成長させようとしてくれた。ここでまた一緒に働けるのは素晴らしいことだ」と話すハインズは、この移籍が成功だったと証明するかのようにプレシーズンで5試合3得点と結果を出した。

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