Summary

  • 原口と浅野が所属のハノーファーで新たな物語がスタート
  • 開幕節ブレーメン戦で先制点を決めたワイダント
  • 4年前はまだ8部リーグでプレー

原口元気と浅野拓磨が所属するハノーファーで、本物の“メルヘン”が始まった。わずか4年前、まだ8部リーグでプレーしていたヘンドリク・ワイダントは、同クラブに今季リーグ戦初ゴールをもたらし、9月3日にはついにプロ契約も締結。一躍、時の人となっている。

その実力を証明するのに、時間はかからなかった。8月25日に行われた開幕節ブレーメン対ハノーファー、浅野との交代で75分にピッチへ姿を現したワイダントは、ブンデスリーガ初出場からたった75秒後に先制弾を記録。試合はその後ブレーメンに追いつかれ引き分けとなったが、ファンや関係者へ与えた衝撃は絶大だった。

しかし、ワイダントが天性の嗅覚と正確なシュートを持ったストライカーであることは、その前の週にも証明されている。ドイツサッカー連盟カップ(DFB杯)1回戦カールスルーエ戦では、同選手が放った2本のシュートがどちらもネットを揺らしており、開幕節を含めれば公式戦シュート3本から3得点。それでもブライテンライター監督が「非常に控えめで謙虚」と評するように、23歳の若手FWが浮足立つことは、決してない。

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4年前はまだ8部リーグの選手

そんなワイダントについて、指揮官が「信じられないストーリー」と話すのも無理はない。195cmの大型FWは2013/14シーズンに、TSGグロース・ムンツェルのU19チームからトップへ昇格。しかしそこは、ドイツのどこにでもあるアマチュアクラブの一つにすぎず、戦う舞台も8部リーグだった。だが、そのシーズンに21得点を記録したことが目に留まり、14年夏からは当時オーバーリーガ(5部)に所属していた1.FCゲルマニア・エゲストルフへ移籍。その後チームとともにレギオナルリーガ(4部)昇格を達成すると、今夏ついにハノーファーのセカンドチームへ引き抜かれた。

しかし、ここで終わらないのがワイダントの運の強さだ。若手を積極的に起用することで知られるブライテンライター監督は「彼の点取り屋としてのクオリティーを、少しばかりチェックしてみたい」と、プレシーズンにトップチームでの練習を打診。勤勉に戦術を吸収し、同監督の信頼を勝ち取った。

そして待望のプロ契約へ

マーティン・キント会長の「FWはゴールの数によって能力が計られる。そして彼はゴールを決めてくれる選手だ。間もなく彼とプロ契約を結ぶことになるだろう」という言葉に嘘はなかった。ハノーファーは9月3日、2020年までの契約でワイダントが晴れてプロ選手となったことを発表。「今回チャンスをもらえたことを、心からうれしく思っています。私のような選手をトップチームの監督、スタッフ、チームメートみんなが温かく受け入れてくれたことは、私にとって本当に幸運でした」と話すワイダントの顔には、満面の笑みが浮かんでいた。

プロクラブの育成組織が整った昨今、ワイダントのようにたった数年で下部リーグからブンデスリーガまで上り詰める例は極めて稀だ。しかしプロサッカー選手になることを目標にする若者にとって、ワイダントは紛れもなく“ドリームズ・カム・トゥルーの体現者”である。浅野をはじめ、ニクラス・フュルクルーク、ボビー・ウッドなど、ブンデスリーガの経験豊富な猛者たちに割って入ることができるか、ワイダントの今後に注目だ。