Summary

  • ドイツ語のポジション用語を紹介
  • ミュラー、ゲッツェ、オバメヤンのポジションは?

「10と6と8を組み合わせてみたらどうだろうか…?」。算数の話のように聞こえるが、これらの数字はブンデスリーガにおけるチーム戦術を語るための基本的な言葉だ。ドイツ人のように戦術について議論するために、聞き慣れないドイツ語のサッカー用語をご紹介する。

リベロ(Libero)

「リベロ」という単語が守備大国のイタリアで生まれたことに驚きはないが、この役割を最も象徴していた選手はドイツ人のフランツ・ベッケンバウアーだろう。リベロのポジションでは思考力と知性が要求されるが、“皇帝”と呼ばれたベッケンバウアーはセンターバックとGKの間にポジションを取り、相手の攻撃の芽を摘んでは前線に正確なパスを送った。ベッケンバウアーの後はキャリア晩年のローター・マテウスも同じ役割を担ったが、現代サッカーにおいてリベロを置くチームはなく、代わりにGKが「スイーパー・キーパー」として活躍している。

ブンデスリーガの代表的選手:フランツ・ベッケンバウアー
同義語:スイーパー

バイエルンとドイツ代表のレジェンド、ベッケンバウアーは典型的なリベロだった © imago / WEREK

6番(No.6)

「6番」は選手の背番号がピッチ上のポジションを表していた時代の名残であり、4ー3ー3、または4ー2ー3ー1システムにおける守備的MFのことを指す。「ゼクサー」(ドイツ語で6番の選手の意)とも呼ばれるこのポジションの選手は、対戦相手の攻撃を感知し、危険を察知し、ボールを奪い返し、前線で華やかに活躍する選手にボールを供給する。派手さがなく、世間から認められることは少ないがチームにとっては欠かせない存在。近年なら「クロード・マケレレのポジション」という言い方ををすれば分かりやすいだろうか。4バックの前に陣取っているが、じっと動かないわけではなくマラソンランナー並みのスタミナと肺活量が要求される。4ー2ー3ー1システムでは中盤の底にタイプの異なる2人の「6番」を並べる「ドッペルゼクス」が採用される。

ブンデスリーガの代表的選手:ハビ・マルティネス、ユリアン・ワイグル
同義語:守備的MF

ハインケス監督の就任以来、ハビ・マルティネスは「6番」の役割を担っている © imago

8番(No.8)

主に4ー3ー3システムで使われるこのポジションは、英語に同義語が存在しない。守備的MFの役割を担う「6番」が自軍の最終ラインに近い位置でプレーするのに対し、「8番」はより前線に近い位置でプレーする。前線と最終ラインのつなぎ役であると同時に、攻守の切り替えにおいてもキーマンとなる。優れた「8番」はウインガーのようなスピードと「6番」並みの運動量、さらには「ツェーナー」(下記参照)の創造性、「トーアイェーガー」(下記参照)の得点力を持ち合わせている。

ブンデスリーガの代表的選手:レオン・ゴレツカ、ナビ・ケイタ、コランタン・トリッソ
同義語:ホレイヤー(フランス語)

ブンデスリーガ屈指の「8番」へと成長を遂げたシャルケのゴレツカ © gettyimages

ラウムドイター(Raumdeuter)

ラウムドイターはドイツ語で“スペースを理解している選手”という意味。カテゴリー分けすると、バイエルンのトーマス・ミュラーが最大限に能力を発揮するポジションはこれに属するだろう。特にスピードがあるわけでもなく、身体能力が並外れているわけでもなく、パワーがあるわけでもない。それでも、ラウムドイターが第六感を使ってスペースに動くと、ボールは魔法のように動いた場所へ転がってくる。

ブンデスリーガの代表的選手:トーマス・ミュラー(バイエルン)

バイエルンのミュラーは神出鬼没の動きでゴールを奪う「ラウムドイター」の典型 © gettyimages / TF-Images

ツェーナー(Zehner)

「ツェーン」はドイツ語で「10」を意味し、チームで最も創造性のある背番号10の選手を指す。4ー2ー3ー1システムでは1トップの後方に位置し、2列目の真ん中でプレー。また、ウォルフスブルクがリーグタイトルを獲得した2008/09シーズンのズベズダン・ミシモビッチのように、4ー4ー2システムの中盤のダイヤモンド型の頂点でプレーすることもある。典型的なツェーナーは広い視野と想像力を持ち、その選手にしか見えないパスコースを見つけて正確無比なパスを通す。単なる司令塔ではなく、得点者がゴールを決める直前にサポーターから大歓声が送られるプレーヤーだ。

ブンデスリーガの代表的選手:ハメス・ロドリゲス、マリオ・ゲッツェ
同義語:司令塔

長期離脱を乗り越え、本来の輝きを取り戻しつつあるドルトムントのゲッツェ © DFL DEUTSCHE FUSSBALL LIGA / Simon Hofmann

トーアイェーガー(Torjäger)

ドイツ語は名詞をつなげていけば、理論上はいくらでも長い単語を作ることが可能だ。そして、ドイツ人はこの複合名詞を好んで使う。「Torjäger」(トーアイェーガー)という単語は「ゴール」を意味する「Tor」と、「ハンター」を意味する「Jäger」で構成されており、ペナルティーエリア付近にボールがある時、そのそばには必ずトーアイェーガーと呼ばれる選手が存在する。シーズン終了後に得点王に送られるトロフィーは大砲(カノーネ)の形をしているが、その呼び名はご想像のとおり、トーアイェーガーカノーネ「Torjägerkanone」だ。

ブンデスリーガの代表的選手:ピエールエメリック・オバメヤン、ロベルト・レバンドフスキ
同義語:センターフォワード、ゴールスコアラー

昨季はドルトムントのオバメヤンが「トーアイェーガーカノーネ」を手にした © DFL DEUTSCHE FUSSBALL LIGA

ジョーカー(Joker)

もちろん、ロッカールームでジョークを言いまくる選手のことではない。むしろ、甘く見ていたら対戦相手は痛い目に遭うだろう。「ジョーカー」は指揮官にとっての切り札であり、ヒーローを必要としている状況でベンチから送り出される選手。もし、ゴールやアシストを決めることができれば、控え選手から先発の座に近づくだけでなく、監督を戦術の天才に見せることができる。

ブンデスリーガの代表的選手:ニールス・ペーターセン
同義語:スーパーサブ

フライブルクのペーターセンは途中出場でブンデスリーガ最多の20得点を挙げている © gettyimages / Michael Kienzler/Bongarts