Summary

  • フランクフルトのニコ・コバチ監督、来季からバイエルンへ
  • 46歳イケメン監督の選手時代とは?
  • 現役引退から9年で常勝軍団の監督就任

アイントラハト・フランクフルトのニコ・コバチ監督が2018/19シーズンからブンデスリーガ6連覇中のバイエルン・ミュンヘンを指揮することが明らかになった。72歳の名将ユップ・ハインケスから常勝軍団のバトンを引き継ぐ46歳の監督について紹介する。

(1)ドイツ−クロアチア

バイエルンがハインケス監督の後任探しで重要視していたのは“ドイツ人監督”だった。それではなぜ、元クロアチア代表選手であるコバチ氏がその座に就いたのだろうか? 実はコバチ監督はベルリン生まれのベルリン育ち。クロアチア系の両親はボスニア・ヘルツェゴビナ(当時ユーゴスラビア)からドイツに移住してきた。つまり、現役時代にはドイツ、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナの代表に選出される可能性があった。とはいえ、ドイツ国民であり、バイエルンは希望通りの監督を獲得することに成功した。

(2)ベルリン

コバチ監督と弟ロベルトはベルリン郊外のウェディングで育った。同地では後にケビンプリンス&ジェローム・ボアテング兄弟もサッカーを始めている。コバチ氏が初めて所属したのはピエール・リトバルスキ氏も所属していたヘルタ・ツェーレンドルフだった。同クラブは現ドイツ代表のアントニオ・リューディガーや米国代表のジョン・ブルックスも輩出している。その後、ベルリン最大のクラブ、ヘルタ・ベルリンでプロデビューを果たし、242試合に出場。ドイツ全土、さらには世界をまたぐことになるキャリアの始まりだった。

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(3)憧れのルンメニゲ

コバチ少年はバイエルン・ミュンヘンの大ファンだった。中でもカールハインツ・ルンメニゲ(現バイエルン社長)のポスターを部屋に貼っていたが、まさか憧れの選手が後の上司になるとは思ってもいなかったであろう。ヘルタからレーバークーゼンハンブルガーSVを経由したコバチ氏は29歳で念願のバイエルンに加入。1年目はトヨタカップで優勝、2年目にはブンデスリーガとドイツサッカー連盟カップ(DFB杯)の二冠を達成した。

(4)バイエルンへの帰還は史上3人目

バイエルンでタイトルを獲得することは何も珍しいことではないが、監督として戻ってくるのは非常に稀なケースだ。バイエルンで選手としてプレーし、後に監督に就任したのは皇帝フランツ・ベッケンバウアーとユルゲン・クリンスマンのみ。クロアチア系の監督としては、ズラトコ・チャイコフスキ、ブランコ・ゼビッチに続いて3人目となる。

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(5)クロアチア代表キャプテン

コバチ氏は12年にわたりクロアチア代表として活躍し、国際Aマッチ83試合に出場した。クロアチア代表が3位に輝いた1998年のフランスW杯は予選に出場しながら、 本大会は負傷のため欠場となった 。しかし、その後は2002年〜2008年までワールドカップ2回、欧州選手権(EURO)2回に出場。2006年に“自国”で開催されたW杯では、出身地ベルリンのオリンピア・シュターディオンでブラジル代表と初戦を戦った(0ー1)。また第2戦では日本代表と対戦し、0ー0の引き分けに。この時、コバチ監督はキャプテンを務めていたが、日本代表キャプテンの宮本恒靖とは後にザルツブルクで再会している。なお、両国ともにグループステージ敗退となった。

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(6)スピード昇進

2006年夏にオーストリア1部リーグのザルツブルクに加入し、2007年と2009年に優勝を果たした。2009年に選手生活を終えると、すぐに同地でコーチに転身する。まずはザルツブルクのセカンドチームを率い、その後はトップチームのアシスタントコーチへと徐々に指導者の階段を昇っていった。転機が訪れたのは2013年、U-21クロアチア代表の監督に就任し、最初の5試合で5連勝を成し遂げた。すると、ブラジルW杯の最後の切符を懸けた戦いの1ヵ月前、A代表の監督に抜擢される。 「大きな任務だが、それとともに魅力的な任務でもある」と述べた若き指揮官は、プレーオフでアイスランドを破り、本大会の出場権を獲得。本番では開幕戦で開催国ブラジルと対戦して注目を集めたが、1勝2敗でグループステージ敗退となった。

(7)弟と“ニコ”イチ

今回もコバチ監督は弟のロベルトをアシスタントコーチとしてミュンヘンに連れて行く。弟とは選手時代にはレーバークーゼンとバイエルン、そしてクロアチア代表でもチームメートだったが、指導者としてもU-21クロアチア代表監督時代から常に行動を共にしている。「我々は互いを補い合い、互いを完璧に理解している。弟との共同作業には自信があるし、これ以上にうまくいくことはないだろう 」と確信している。

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(8)ジェントルマン

コバチ監督は“勝つこと”の意味を知っている。選手としてバイエルンでプレーしていたのだから、それもそのはずだ。しかし、負けることの意味も同時に知っている人物でもある。誰かの夢が叶う時、それは誰かの夢が断たれた瞬間でもある。2015/16シーズン、降格危機を救うべくフランクフルトにやってきたコバチ監督は、ブンデスリーガ2部のニュルンベルクと入れ替え戦でチームを見事に残留へ導いた。フランクフルトの選手たちが喜びを爆発させてファンと盛り上げっている中、コバチ監督は落胆するニュルンベルクの選手のところに赴き、一人一人を励ました。この行動はその年のドイツフェアプレー賞に選ばれている。

(9)例え嵐が吹き荒れても......

2015/16シーズン残り10試合でコバチ氏がフランクフルトの監督に就任した時、何人かは眉をひそめていた。さらに就任から5試合で1勝4敗の成績しか残せず、批判は高まっていた 。フランクフルトの“サッカーの神様”ことアレクサンダー・マイヤーの離脱というアクシデントもあった中、それでもコバチ監督は最後にはチームをサバイバルから生還させた。

バイエルンではもっと多くの大きな決断が待ち構えているだろう。しかし、コバチ監督はすでに逆風への準備ができいる。その証拠に「肩幅は広いので、どんな重圧にも耐え得るだろう」とバイエルン監督就任を公にした会見で話している。

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(10)多国籍軍の指揮者

フランクフルトはブンデスリーガ屈指の“多国籍軍”と呼ばれている。というのも、現在は17の異なる国籍を持つ選手が所属しているからだ。「年齢や容姿、ドイツ人か外国人かに関わらず、一番良い選手がプレーする」とコバチ監督は明言し、チームを一つに束ねている。

また、来季からチームを去ることが判明しても、選手から監督へのリスペクトは変わらない。長谷部誠は「監督はこれまで自分にいろいろなものを与えてくれたので、残りリーグ4試合とカップ戦(DFB杯の準決勝)を監督のためにやっていきたい」と最高のはなむけを用意するつもりだ。

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