チリの命運を握る男
アルトゥーロ・ビダルが戦っている姿を見ていると、円形競技場があったローマ時代にタイムトリップをしたような気持ちになる。時に声を上げ、威厳を保ち、すべてを投げ出して勝つという不屈の闘士。バイエルン・ミュンヘン、そしてチリ代表として戦うビダルは“現代のグラディエーター”と言えるような選手だ。
ロデリーノで子ども時代のビダルを指導したアルトゥーロ・オリア監督は「彼のことを“アースイーター”と言っていた」と当時のことを振り返った。「転んでもプレーした。叩いてやめさせるほどだったよ。でも、痛めつけられてもケガをしても、彼は気にとめる様子などなかった」
そんな子ども時代から20年。ビダルの強さは増すばかりだ。コロコロとプロ契約を結び、その後はレーバークーゼンへ移籍。そして、ユベントスとバイエルンでのプレーを経て中盤を広くカバーできる完璧なMFとなった。
ビダルは2014年のインタビューで臆することなく自画自賛していた。「僕のプレースタイルを真似ようとする人たちはたくさんいる。でも、一つだけ言いたいのは僕こそが世界最高の守備的MFだ。僕ほどしっかり守備をしてゴールも挙げられる選手はいない」