マヌエル・ノイアーがゴール前に立ちはだかり、アリエン・ロッベンが右サイドを切り裂き、ロベルト・レバンドフスキやトーマス・ミュラーがゴールを奪う――バイエルン・ミュンヘンの面々が華々しいプレーを披露する中、愚直なまでに左サイドでひたすらアップダウンを繰り返す若者がいた。その名はフアン・ベルナート。昨夏バイエルンに加入し、今季ここまで(第30節終了時)チーム2位タイの出場試合数を誇る韋駄天に焦点を当てる。

加入直後から主力に抜擢

「フアン・ベルナート? 何者だ?」

2014年夏、バレンシア(スペイン)からバイエルンへ移籍することが決まった21歳の若者について、ファンはおろかドイツの専門家たちでさえ、十分な知識を持ち合わせていなかった。しかし、獲得を熱望したグアルディオラ監督が確かであったことは、すぐさま誰の目にも明らかになる。左サイドの守備的な位置に君臨していたダビド・アラバの存在を脅かすほどの選手になるかもしれない――その期待は瞬く間に広がっていった。

ベルナートはウォルフスブルクとの開幕戦で先発に抜擢されると、そのままフル出場。ここまでの30試合でピッチに立たなかったのはわずかに2度しかない。ミュラーの29試合に次いで、2番目に多くの出場試合数を誇っている。

しかし、その適応力の高さは、指揮官にとっても嬉しい誤算だったのかもしれない。同監督はベルナートについて「彼がここまで良い選手だとは私も思っていなかった。非常にスピードがあり、そしていつも相手にとって危険なプレーをすることができる。ワールドクラスのプレーヤーへと成長したよ」と手放しで称賛。また、当初は「ベルナートか? アラバか?」という疑問もあったが、グアルディオラ監督は別の道を選択。つまり「ベルナートもアラバも」を模索し、よりダイナミックなプレーが期待できる前者を、後者よりも1つ前のポジションに配置。それにより、2人のレフティーはお互いの長所を生かし、見事なまでに共存しているのだ。

類稀な脚力、そしてフェアプレー。しかし慢心とは無縁

ベルナートの特筆すべき点は、なんといってもその脚力だ。現在のシーズン合計スプリント数は712回で、2位のミュラー、3位のロッベンを大きく引き離し、堂々のチームトップ。また走行距離も1位ミュラーに肉薄する280.3kmを記録している。バイエルンの得点パターンは中央より右側が主流となっているが、その陰でベルナートが淡々と左サイドで激しくフリーランニングを繰り返していることは決して看過できない。

またもう1つの特長は、非常にクリーンなプレーを見せること。2285分という出場時間で同選手が犯したファウルは、なんとたったの11回。もらったイエローカードも1枚きりで、累積警告はおろか、不用意なファウルで相手にセットプレーのチャンスを与えることすら極めて稀なのだ。ただし、1対1の場面が少ないかといえばそうではなく、1試合あたり約10回で、バイエルンの面々では多い部類に入る。勝率も50%を優に超えており、しっかりと任務を遂行している。

しかし、この若者に慢心はない。

「ここまで僕にとっては、まるで夢の中にいるような感覚で時間が過ぎていった。21歳という年齢で、新しい国に行き、新しいリーグで戦うことは、とても大きな一歩だったし、こんなスーパーなチームの主力としてプレーできるのは本当に素晴らしいことだね。予想よりもはるかに上出来だよ」と謙虚な姿勢を崩さないベルナートは、これからもきっとバイエルンの左サイドでその快足ぶりと献身的なプレーを披露してくれるだろう。