が所属するマインツは2月17日、カスパー・ヒュルマンド前監督を解任し、同クラブU23チームで指揮を執っていたマーティン・シュミット氏が後任に選ばれたことを発表した。

スポーツディレクターのクリスティアン・ハイデル氏が「ただの内部昇格ではない」というシュミット監督は、昨季までマインツのトップチームを指揮していたトーマス・トゥヘル元監督の推薦により、今から5年半前、同クラブU23にやってきた。激しいプレッシングと攻撃サッカーを巧みに植えつけるその手腕は、かつてマインツを指揮し、現在ドルトムントに在籍するユルゲン・クロップ監督、そしてトゥヘル元監督とも通じるものがある。

選手として華々しい活躍を残せなかった点も、前任者たちと共通している。シュミット監督は現役時代、主にスイスの下部リーグでプレーし、トップレベルでのプレー経験は1度もない。しかし、ひざの前十字じん帯断裂という大けがを7度も負いながら、34歳まで現役を続けたその屈強な精神力は今なお健在。残留争いの渦中にあって、何よりも大事なものは戦う気持ちだと判断した首脳陣にとって、シュミット監督を選択することに迷いはなかった。

それを裏付けるかのように、同監督は練習初日から体全体を使ってジェスチャーし、小走りで自らマーカーを設置。そして練習後に撮影されたマインツ公式HPのインタビュー映像では、指揮官の声はまるでひどく風邪をひいたかのようにガラガラになっていた。声帯の限界などお構いなし――彼が常軌を逸した熱血漢であり、サッカーに全てを捧げる人間であることは、たった1日で誰の目にも明らかとなった。

その異色な経歴にも注目せざるを得ない。サッカーをするかたわら自動車整備に関する学士号を取得し、10年にわたってレーシングカー専門の整備士として勤務。さらには自ら車のチューニング会社、そして服飾会社も設立するなど、起業家としての一面も持っている。ただの熱血漢であれば一抹の不安は残ってしまうが、知的さと多岐にわたる才能をあわせ持つ指揮官であれば、そこにかかる期待は大きくなるのが当然というものだ。

「私はうるさい監督だよ」――そう話すブンデスリーガ史上7人目のスイス人監督は、マインツを降格危機から救うべく、今日もグラウンドで大声を張り上げている。