香川のドルトムント第2章、まずはコンディションとの戦い

8月31日、2010/11シーズンからの2年間でブンデスリーガ2連覇と国内2冠をもたらした“放蕩息子”、のドルトムント復帰が電撃決定した。2年ぶりとなるその帰還は、同クラブの選手、監督、首脳陣、そしてファンの誰もが待ち望んだものだった。契約締結からわずか1日で「KAGAWA 7」のユニフォームが5,000枚以上も売れたように、ドルトムントの町はまさしく“香川フィーバー”に色めき立っていた。

カムバック初戦となった本拠での対フライブルク戦前のメンバー紹介では、スタジアムアナウンサーもその名を呼ぶ前にあえて“タメ”を作り、80,000を超す観衆の興奮を駆り立てるなど、粋な演出をしてくれた。そして、それに応えるべく、空白の時を感じさせない周囲との好連携を披露し、41分には自ら得点も決め千両役者ぶりを発揮。開幕戦でつまずいたチームを上昇気流に乗せるため、彗星のごとく舞い戻った男は、「きょう感じたことを言い表すのは少し難しいですね。南ゴール裏全体が僕の名前を呼んでくれたときは、言葉で表現できない気分でした。ファンのみんなが僕を本当に温かく迎えてくれたのを見て、彼らのために良いプレーをしなければならないという信念が強まりましたね。終始、鳥肌が立っていました」と、その充足感を語っていた。

しかし、これまでに香川が記録した今季リーグ戦得点はこの1点だけ。欧州チャンピオンズリーグ(CL)やドイツサッカー連盟カップ(DFB杯)では無敵の強さを誇りながらも、ブンデスリーガに舞台を移すとどうしても勝てない。第4節から第10節の7試合で6敗1分けというチーム状況と呼応するかのように、香川も今一つ調子を上げられないでいる。

その原因の1つは、守備戦術の相違から生じる運動量の差だろう。片方のサイドに寄せて縦に速く攻める傾向が強いプレミアリーグにおいては、前線の選手は主に相手のパスコースを限定することが求められる。しかし縦にも横にもピッチを広く使うブンデスリーガという戦場、そしてファーストプレッシャーの重要性が非常に高いドルトムント流プレッシングサッカーでは、要求されるタフネスが格段に違う。またマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)で試合の出場機会が減少していたこともこれに拍車をかけた。

足がつったため64分にベンチへ下がった先述のフライブルク戦後、「(マンチェスター・ユナイテッドでは)試合に90分通して出場することがあまりなかったので、後半足にきました。そういうところのほうが今は心配というか、もっともっとコンディションを上げていかないと」と反省の弁を述べているが、それから約1カ月半が経過した10月22日のCLガラタサライ戦でも、80分頃ももの裏に同様の症状が出ている。さすがにこの時ばかりは「フライブルク戦の時は、試合が久し振りだったので。今日はちょっと・・・まあでも足をつることは多々あるので、改善は長い目で見てやっていきたいです」と、少々歯切れが悪く、やはり2年間のブランクというのは、本人の想像以上に大きかったのかもしれない。

しかし、彼が持つ繊細なボールタッチ、一瞬でマーカーを振り切るアジリティ、そしてプレッシングの質は、猛者が集うドルトムントの中でもすでに十分な輝きを放っており、あとは2年前のコンディションを取り戻すだけ。香川自身が納得のいくパフォーマンスを見せられるようになった時、初めてドルトムントは本当の右肩上がりを見せられるのかもしれない。