主将ラームと談笑するアロンソ(左)
主将ラームと談笑するアロンソ(左)

アロンソ加入の影響

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負傷者続出の背景、「災い転じて福となす」か

8月29日にバイエルン・ミュンヘンへ移籍したシャビ・アロンソは、翌30日の ブンデスリーガ第2節、対シャルケ戦に先発した。すでに指揮官からいくつかのことを学習したというアロンソだが、バイエルンが同選手を獲得した背景には、ジョゼップ・グアルディオラ監督自身の学習もあった。

これまでの経験から同監督は「サイドから攻撃を始め、中を使っていく。つまりゴールへの最短距離は目指さない。あえて相手守備陣を我々に向かってアタックさせ、それを利用し攻撃を仕掛ける。それこそが最も危険な攻め方だ」というサッカー哲学を持っていた。ちまたでささやかれる「目的意識のない単なるパス回し」はグアルディオラ監督も「大嫌いだ」と話す。そして自身が標榜するサッカーを昇華させるために必要とされる人材がアロンソだったというわけだ。

今夏クラブを去ったトニ・クロースのように、アロンソも長短を織り交ぜた豊富な種類のパスを散らすことができるが、幸い前線には世界トップクラスの選手がそろっているため、攻撃面での役割はそれで十分。それよりもむしろ、クロースにはなかった対人プレーの強さや、守備時での優れたポジショニング、危機察知能力こそアロンソの特長であり、昨季の欧州チャンピオンズリーグ準決勝でレアル・マドリード(スペイン)相手にカウンターの餌食となってしまった指揮官の苦い経験を払拭するためには、最も必要な人材だった 。

1ボランチを任せられる選手が新たに加わったことで戦術には幅が生まれ、主将フィリップ・ラームを右サイドバックに配置することも可能となった。もちろんティアゴ・アルカンタラやバスティアン・シュバインシュタイガー、ハビエル・マルティネスらの長期離脱がなければ、アロンソの獲得にバイエルンがここまで本腰を入れていたかは分からない。しかしシャルケ戦で最も存在感を見せたのは加入後間もない同選手。早くも「災い転じて福となす」の様相を呈している。