昨季は入れ替え戦を通して1部残留を決めたホッフェンハイムだが、今季は残留争いにはかかわりたくない
昨季は入れ替え戦を通して1部残留を決めたホッフェンハイムだが、今季は残留争いにはかかわりたくない

原点への回帰

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ブンデスリーガ今季みどころ

信頼回復は「徐々に」

ギスドル監督は昨季、自らも「小さな奇跡」と振り返る偉業を成し遂げた。シーズン終了まで残り8試合という時点でホッフェンハイムの同シーズン4人目の監督を引き受け、絶望的な状況にあったチームを見事に1部残留へ導いたのだ。

自動降格の17位に位置し、最終節を迎えた。対戦相手はよりにもよって、のちに欧州チャンピオンズリーグ準優勝となる強豪ドルトムントだったが劇的な逆転勝利で16位へ浮上し入れ替え戦出場権を獲得。2部3位のカイザースラウテルンを下して残留をつかみ取った。監督は新シーズン、攻撃サッカーのチームに改革を進めている。



ギスドル監督は以前、ホッフェンハイムでU23チームのコーチをしていた経歴がある。いまでは跡形もないが、当時トップチームを受け持っていたラングニック監督が定着させたサッカー哲学を知る人物だ。原点回帰を念頭に、将来を見据えたチーム作りを進めている。

「若い選手を育て、観衆を沸かせるような攻撃的サッカーがしたい」と理想を打ち明けるギスドル監督。サッカー専門家の中には奇跡の残留で勢いに乗ったホッフェンハイムを今季のダークホースとみる向きもあるが、ギスドル監督は浮かれた様子を一切見せない。あくまでも信頼回復は「徐々に」だ。

ギスドル監督は、選手に対し執拗なまでに「謙虚さ」の重要性を説く一方で、自分の構想に合わない選手には容赦がない。今夏、GKビーゼ、DFデルピエール、MFワイス、FWデルディヨクを含む、ベテラン10名が全体練習から外された。監督は自身の理想を実践する選手のみでチームを固めようとしている。

補強は攻撃中心



肥大したベンチの整理を担当するのはローゼン・プロサッカー部長。期限付き移籍などで選手の放出を進めた。獲得は攻撃選手に絞り、ボルドー(フランス)からFWモデステ、ノルウェーからエルユヌシが加入した。FWでさらにもう1人の獲得も視野に入れている。

昨季評価を高めたU21ドイツ代表FWのフォラントは、チームに残る道を選んだ。「何か起こりそうな気がするから、喜んで残った」とクラブへの期待を明かす。「素晴らしい監督」と賞するギスドル監督への信頼も残った理由の一つだろう。


ユース育成に注力



ユース生え抜きの選手でのチーム作りを目指す、新生ホッフェンハイム。「私が若い選手を使うのは、彼らが若いからではない。いい選手だから使うのだ」とギスドル監督。弱冠17歳のDFズューレはその好例だろう。CBと左SBの両ポジションをこなすテスカーとともに、すでにブンデスリーガでの出場経験がある。キーパーでは、成長株のGKカステールスが正GKの座についている。中盤は経験豊富なサリホビッチ、テクニックに定評のあるフィルミーノが主軸だ。

昨季、厳しい1年間を過ごしたホッフェンハイムだが、今季は残留争いから距離を置くこと、そしてサポーターの信頼を取り戻すことができれば、それだけで一定の進歩と評価することができるだろう。

トビアス・シェヒター (Tobias Schächter)

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