今夏の合宿でシュミット監督は、チームの結束力強化を狙い、水上スキーなどのレクリエーションも実施 (© Imago)
今夏の合宿でシュミット監督は、チームの結束力強化を狙い、水上スキーなどのレクリエーションも実施 (© Imago)

足踏み状態に終止符

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ブンデスリーガ2部今季みどころ

「足踏み状態から早く抜け出したい」

2013/14シーズン開幕を目前に控え、1860ミュンヘンは悲願の1部昇格実現へ闘志を燃やしている。シュミット監督も昇格という目標設定について「当然。いまさら隠すことでもない」と言い切る。過去2シーズンは目標を上位進出に据え、いずれも6位で終了するという賞賛に値する成績を残した。だが1966年にブンデスリーガ優勝した歴史を持つ古豪が満足する結果ではないはず。それはシュミット監督にも分かっている。

1860ミュンヘンにとって来年2014年は、2部所属が10年目を迎える節目の年だ。この10年間、連続で2部に属していたチームは他にない。しかし「10周年」というポジティブな見方をしているクラブ関係者はいないだろう。なぜなら、この10年間は1部昇格を遂げた他クラブの後塵を拝し続けた屈辱の期間に他ならないからだ。例えば、バイエルン州のライバル、アウクスブルクはいまや1部で3年目を迎えようとしている。「昇格が絶対できないクラブ」などというレッテルを貼られていたフュルトでさえも、わずか1年ではあるが昨季はブンデスリーガに属した。


「足踏み状態から早く抜け出したい」と、シュミット監督はミュンヘンの大衆紙「TZ」に話した。毎シーズン終盤に差し掛かり昇格争いが激しくなる頃に、それを遠くから眺めるだけ、という例年のチーム状況に行き詰まりを感じているのだ。昨季3冠を達成した名門バイエルン・ミュンヘンの輝かしい功績への羨望は、同市に拠点を置く1860ミュンヘンの焦燥感を煽る一方だ。マリエン広場の市庁舎を再び青と白で飾りたいという思いは、年を追って高まる。

2013/14シーズン、状況打破のための条件は整っている。1860ミュンヘンは今夏、1・2部を通じ最も早くトレーニングを開始。新加入選手が始動日から参加できたという幸運も重なった。昨季は主力が不振に陥るとカバーができず、後半戦になってようやくフレンドら即戦力の獲得に動いたが、こうした状況が改善されたようだ。「バタバタしていた」と当時を振り返るシュミット監督は今夏、主力の放出をファティのみにとどめ、万全の状態で新シーズンに臨む。

期待の新戦力、ヤニック・シュターク



1860ミュンヘンはいたずらにリスクを犯さず、若いドイツ人選手に望みを託す。適応が早く、大きな成長の可能性を秘めており、計算できる戦力と見ているからだ。特に、今夏同じリーグのFSVフランクフルトから獲得した22歳の守備的MFシュタークは昨季、キッカー誌がブンデスリーガ2部ボランチ部門の最優秀選手に選出したほどの有望株。シュタークは1部のクラブからオファーを受けていたにもかかわらず、1860ミュンヘンへの移籍を決めた。「自分を過大評価するのは良くない」と、時期尚早にして高レベルな環境に身を置いたばかりにベンチ要員となるよりは、実践の中で能力を磨くほうが得策と考えたのだ。シュタールとともにチームをけん引する存在になることは間違いない。

左サイドを任されるMFアードルングは、「1860ミュンヘンの方が(以前所属していた)コトブスよりもブンデスリーガ(昇格)に近い」と言う。シャルケのU21チームから移籍する左SBヘアトナーは、チームの戦略に上手く馴染めそうだ。「学習能力、戦術理解能力ともに高い。積極的に競り合いにいく選手」とヒンターベルガー・スポーツディレクターも太鼓判を押す。また、同じく新加入のマークス・シュバーブルは、1860ミュンヘンがブンデスリーガに所属していた時代に主将を務めていたマンフレッド・シュバーブルを父に持つ。

世代交代の進む中、存在感を示しているのはアウクスブルクから加入したFWハイン。1部での経験を持ち合わせる新戦力として、攻撃陣に新たな競争環境をもたらす。「根っからの努力家」とシュミット監督に言わしめる24歳は、今夏の強化試合ではすでに古株のFWラオトから定位置を奪い取った。また2部で最多得点の記録を持ち、昨季も12ゴールでチーム得点王となったラオトは今夏、DFバローリにキャプテンマークを譲った。シュミット監督の「ベニー(ラオトの愛称)は実力を出せさえすれば、素晴らしい選手。ただ、彼にも競争が欠けていたと思う」という言葉からは、状況打破への強い思いが読み取れる。

「ケルンよりも昇格の可能性は高い」



クラブ上層部の人事問題などピッチ外からの雑音ばかりが目立つ1860ミュンヘン。「だからこそチーム作りには積極的に取り組んでいる。これ以上調子を崩されるわけにはいかない」と、シュミット監督は水上スキー、トレッキングなど、あの手この手を使ってチームの結束を強めることに取り組んでいる。これまでU21チームのコーチを務めていたフォンアーレン氏のトップチーム加入は、監督の「トップチームに可能な限り人材を集中させたい」という考えから決まった。

ベストメンバーで最大限の結果を目指す。ちゅうちょはしない。クラブ史上最大のスターで1990年W杯イタリア大会の優勝メンバーでもあるトーマス・ヘスラー氏は、キッカー誌とのインタビューで「ケルンよりも昇格の可能性は高い」と古巣のひとつ、1860ミュンヘンに期待を寄せている。この予想が的中し、見事に昇格が実現すれば、1860ミュンヘンの2部10年目は最高に明るい年となるだろう。

クリストフ・グショスマン (Christoph Gschoßmann)