グアルディオラ新監督について バルセロナ時代の同僚が語る

6月24日、バイエルン・ミュンヘン新監督に就任したペップ・グアルディオラ氏(42)。史上初の3冠を達成したあとだが、グアルディオラ氏が率いることで「バイエルンのサッカーはより魅力的になる」と話すのは、バルセロナ時代の同僚で元オランダ代表のロナルド・デブール氏(43)だ。

ロナルド・デブール
元オランダ代表。1987年、クライフ監督(当時)率いるアヤックス(オランダ)でユースからプロ入り。アヤックスで双子の兄フランク(現アヤックス監督)やファンハール監督(1991~97年)とともに欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝(1995年)など黄金時代を築いた。1994年、1996年のオランダ年間最優秀選手。1999年、グアルディオラ氏のプレーしてしたバルセロナに、兄フランクとともに移籍。クライファート、ライジガー、コキュー、ゼンデンらと「オランダ・コネクション」を構築し、ファンハール監督(当時)のもとスペインリーグ優勝を果たした。グラスゴー(スコットランド)やカタールのクラブを経て2008年に現役引退。現在はアヤックスでユースの指導に携わっている。



―― ドイツ勢対決となった欧州チャンピオンズリーグ(CL)の決勝には驚いたか。

デブール氏 多少は。必ずしも予想していた組み合わせではなかった。だが、バイエルンもドルトムントもレベルが高く、調子のいい日にはどんな相手も倒すことのできるチームなだけに、まったく予想外というわけでもなかった。特にバイエルンはシーズンを通して、毎週絶好調という類まれなシーズンを送ってきただけに。バルセロナでさえ歯が立たなかった。しっかりと組織されており、CL優勝を果たした1995年当時のアヤックスを彷彿(ほうふつ)とさせられた。どのポジションにも弱みがなく、選手全員が個人の能力を合わせてチームに貢献する点など、まさにそうだ。それでも、一時代の終結と言うつもりはない。バルセロナだって当然バイエルンを倒すことができる。ただコンディションの整った日でないと無理だが。

―― ブンデスリーガ所属クラブがCLで強かった背景には、他のリーグにはない冬季のリーグ中断期間にあるのだろうか。イングランド・プレミアリーグではクリスマスにさえ試合が行われる。

デブール氏 個人的な見解としては、イングランドのチームは他国のチームに比べ、シーズン終盤にかけて疲れが見られるように思う。休みがないだけでなく、他にもカップ戦を戦っていることも大きいだろうが、スペインでもイタリアでも同じこと。加えて代表戦の負担もある。こう考えると、冬季中断期間のあるドイツ勢は有利だと思う。誰にでも、体力的にそれなりの休養が必要だ。

―― バイエルンは今季すべての大会で優勝を飾ったにも関わらず、監督を交代。この流れはグアルディオラ新監督にとって、どんな意味をもたらすのか。

デブール氏 新監督にとって、就任に最適な時期とは言えないだろう。全タイトル獲得という偉業を超えることはできないから、グアルディオラ新監督にとっては非常に難しい挑戦となるはずだ。それでも、元同僚として頑張ってほしいと思っているし、幸運を祈っている。

―― サッカーではよく「勝っているチームはいじるな」と言われるが、グアルディオラ新監督はチームと戦術を変えることができるのか。それとも、監督自身がバイエルンのスタイルに合わせる必要があるのか。

デブール氏 その必要はない。現在のバイエルンのサッカーを見ると、すでにグアルディオラの哲学に近いものが完成している。新監督のもとでチームが成長し、さらに魅力的なサッカーをするようになり、ボール支配率も上がるだろうと確信している。(グアルディオラ新監督率いるバイエルンは)対戦相手を圧倒して向こうのやる気を失わせ、強さを見せつけるようになるだろう。

―― 近代的なバルサのサッカーを築き上げたのはかつてのオランダ人監督であり、さらに若手からプロまで変わらない一定のシステム自体だが、それはここ数十年のアヤックスでも同じこと。ヨハン・クライフ氏やオランダサッカーが、グアルディオラ氏に与えた影響とは。

デブール氏 一言では説明できないほど。グアルディオラ本人も自伝で触れているように、クライフとファンハールに非常に大きな影響を受けている。試合における組織力や細部にまでわたるこだわりなど、まさにふたりのいいところを受け継いでいる。頭脳サッカーを非常に重要視しており、体力的なことは二の次という考えだ。最終的に「いつでもボールの方が選手より速い」という哲学を持っていると思う。

―― 現役時代の同僚、グアルディオラ氏の人物像とは。

デブール氏 すごく親切で、人格者でもある。仕事は常に真摯に受け止め、現役時代も練習ですら負けず嫌いだった。それはゴルフでも同じ。何事に対しても非常に集中して取り組む、まさに完璧主義の持ち主だ。

―― 現役時代にも監督の目線で物事をみていたのか。

デブール氏 まさに監督の右腕として、試合中もチームメイトとよく会話し、指示を出していた。体格的に優れていたわけではないというのも、その理由のひとつだろうが、その欠点を頭脳的な賢いプレーで見事にカバーしていた。いつでもあらかじめ次に何が起こるかを予測していて、それに合ったプレーを準備していたが、これはまさに天性の才能としか言いようがない。

―― 監督としてのグアルディオラ氏とは。

デブール氏 落ち着いてベンチに腰を下しているタイプではない。常にチームをサポートする努力を怠らない監督だが、もちろん試合の流れを読んで少しリラックスするタイミングを見極めることもできるし、選手たちがうまくプレーをしていて(監督の)助けが必要ない場合はそれを察知することもできる。

―― ベッケンバウアー名誉会長、ヘーネス会長、ルンメニゲCEO、ザマー・スポーツディレクター、とバイエルン幹部にはサッカー界の大物が揃っている。これは新監督にとって吉と出るか、凶と出るか。

デブール氏 監督とは常に独立性を求められるもの。自らの方針に従って、やるべきことをやるだけだ。もちろん、経験豊富なクラブ幹部と意見の交換はするだろうが、最終的には(グアルディオラ新監督が)自ら決断を下すはずだ。

―― 再び3冠達成する可能性は。

デブール氏 現実的に考えて、それはないだろう。それほど頻繁に達成できるものではないし、チームのレベルの高さだけでなく多少の運も必要となる。ただ、グアルディオラ新監督のもと、これから数年間のバイエルンは安泰だと確信している。

聞き手 Jürgen Blöhs (ユルゲン・ブレース)