2006年7月4日、ドルトムントで行われたW杯ドイツ大会準決勝。ドイツは延長の末イタリアに敗れ、地元大会での決勝進出は夢と消えた。後列左端の21番が、当時ドルトムント所属のDFメッツェルダー
2006年7月4日、ドルトムントで行われたW杯ドイツ大会準決勝。ドイツは延長の末イタリアに敗れ、地元大会での決勝進出は夢と消えた。後列左端の21番が、当時ドルトムント所属のDFメッツェルダー

「接戦になる」

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クリストフ・メッツェルダー、CL準決勝を語る

【ミュンヘン発・bundesliga.de編集部】ドイツ対スペイン-いや、詳しくいえばバイエルン対バルセロナとドルトムント対レアル・マドリードだ。このカードが4月12日に決定して以来、各チームのファンはCL準決勝2試合に向けて熱くなっている。しかし、この現そして前ドイツ王者と世界の強豪との顔合わせには、いったいどんな意味があるのだろうか。

bundesliga.deはそれをよく知る人物に話を聞いた。シャルケの元ドイツ代表DF(32)。ドルトムントに7年、スペイン1部リーグのレアル・マドリードに3年在籍した選手だ。メッツェルダーはスペインの両チームのメンタリティーやユースワークについて、そしてなぜバイエルンがここ4年で3度もCL決勝の舞台で敗れたかを語った。

bundesliga.de CL準決勝でドイツの2チームとスペインの2チームが顔を合わせます。これはこの2つの国が欧州サッカーを主導している明らかな兆候ですか?

メッツェルダー それは少しいきすぎた解釈ですね。スペインのチーム、特にレアル・マドリードは決してスペインサッカーを代表しているわけではない。この2チームは世界でもトップレベルで、非常に国際的なスターを抱えています。それに比べてドイツ国内の成長は、独自の若い力によるものが大きい。我々の若い世代をみれば、ドイツが将来の巨大なポテンシャルを秘めていることがわかります。スペインは未だに黄金世代から成り立っています。彼らは近年、さらなる才能を組み入れるという飛躍を成しとげなくてはならないでしょう。

bundesliga.de 後進の指導に関して、ドイツに利点があると思いますか?

メッツェルダー ドイツはその分野では、欧州ナンバーワンです。いま話した世代だけでなく、ユースから育ってきた選手がそれを示しています。スペインではバルセロナが伝統的に、どんどん才能を発掘し大人数の選手を抱えていますが、ここでもそのうち幾人かの選手たちは去り、この選手たちにふさわしい代役がみつかるかどうか、という疑問が出てくるでしょう。レアル・マドリードもまたタレントの宝庫ですが、どちらかというと1部リーグのほかのチームに行ってしまいます。ユースチームからトップチームへ上がる選手はほとんどいません。つまり、総合的に考えてドイツはスペインを近いうちに超えると思います。

bundesliga.de ドイツのトップチームも、どんどん外国のスター選手によってポジションが固められる傾向に気づいていますか? バイエルンはによって最近再びそういった方向に向かっています。

メッツェルダー ヨーロッパの選手で混成しようとするトップチームは、確実なポイントに外国のスターを据えなくてはなりません。しかしバイエルンは例えば、ルイス・ファン・ハール前監督の下で、、といった独自の選手たちのラインを生み出しました。これはミュンヘンにとってはどちらかといえば、過去数年に比べると普通ではないことです。しかしまさにそれをバルセロナでやり通したペップ・グアルディオーラ氏が新監督としてやって来れば、バイエルンでもそのラインをたどるでしょう。そしてドルトムントは同様に、緊急事態から崩壊を逃れることに成功しています。

bundesliga.de 戦術の指導と、実際の試合での戦術に目を向けてドイツとスペインのチームを比べるとどうでしょう?

メッツェルダー その分野においては、バルセロナは間違いなく完全に例外です。これほどにユースからシニアまで通して戦略的に統一された考えをもってやっているチームは、ヨーロッパではほかにありませんね。マドリードはこの部分では違っています。レアルは観客をスペクタクルで楽しませたいと考え、つまりビッグスターを提供します。ドイツでは特に、ユース育成部門を通して戦術的な視点での発展がありました。ドイツの若い選手は今日、すでにかなり先へ行っていますよ。やはすでに世界的クラブでプレーできるレベルにあり、必要とされる教育と自信を得ています。

bundesliga.de まだほかにも、準決勝でドイツチームにとって重要な長所はありますか?

メッツェルダー 準決勝では接戦になります。バイエルン対バルセロナでも、違いをなし、試合を決定するのはわずかな部分です。接戦では常にメンタリティーが大切になります。この面でバイエルンが絶対的に優れているとは思いません。バルセロナは近年多くの国際タイトルを獲得し、たくさんの経験を積んでいます。また、バルセロナにはプジョルやセルヒオ・ラモスのようにチームの中心を担う、1対1で競り勝ち、チームを鼓舞する選手がいます。こういった選手は私の目からみれば、ドイツのチームだけでなくどちらにもいます。

bundesliga.de ドイツ代表は2008年の欧州選手権決勝と2010年W杯準決勝で、スペインを破ることができませんでした。今回、クラブレベルでもっといい試合をするためにはどうすべきでしょう。

メッツェルダー 2008年は、ドイツは十分な強さを備えていなかった。あれはスペインの黄金世代の始まりでした。それと並行して、バルセロナがヨーロッパの大会をすべて制覇していった。2010年は明らかにもっと接戦でした。ドイツ代表にいま目を移すと、ヨアヒム・レーフ監督は若い層からも素晴らしい選手を創り出すことができる。私の目からすれば、代表レベルの変遷は少しずつドイツの方向へ芽吹いています。クラブレベルでのインターナショナルな選手の混在は、少し違う意味があります。それにレアル・マドリードの予算はドルトムントよりも常に多いでしょう。しかしドイツのサッカーはクラブレベルでは確実に追いついている。それはバイエルンとドルトムントが今季のCLで示しました。2年前のシャルケの準決勝進出も同様です。

bundesliga.de バイエルンかドルトムントがCL優勝を果たせば、ドイツサッカーと代表チームのさらに後押しになりますか?

メッツェルダー そうですね。この両チーム選手の多く、たとえば、、、などは、代表チームの土台となっています。彼らが自信を持つことは、代表にも影響します。しかしW杯はまだ来年です。今季CLの結果は、2014年にブラジルで起きることの説明にはなりません。

bundesliga.de タイトル獲得は4強チームにとってどんな意味があるのでしょうか。

メッツェルダー レアル・マドリードにとってはタイトルそのものですね。レアルほどCLを重要視するチームはありません。10度目のCL獲得は最優先されます。前回9度目は2002年で、あれからかなり経ちました。レアルにとっては、ほとんどトラウマのようになっています。バルセロナについては、ここ何年も多くのタイトルに関して、決定的な試合でまだなおハングリーさがあるのか疑問に感じてきています。バイエルンは2010年と2012年に決勝敗退したことが、今季の大きなモチベーションになっており、信じられないほどのクオリティーと自信によるファンタスティックなシーズンを送っています。ドルトムントにとっては、もちろんここ数年の業績と戴冠はセンセーショナルなことです。

bundesliga.de 決勝の顔合わせは、バイエルン対レアル・マドリードと予想しますか?

メッツェルダー レアルとバイエルンは、このタイトルに対してもっとも獲得欲を持っている2チームですね。ドイツのファンは聞きたくないでしょうが、レアルが今年はバイエルンをウェンブリー(決勝戦スタジアム、ロンドン)で倒すと思います。しかしこれは共感などではなくて、勘です。

bundesliga.de それでは、あなたの勘ではバイエルンが準決勝でどのようにバルセロナを破るのでしょう? メッシを止めることは可能ですか?

メッツェルダー これらはほぼ同じレベルにある完ぺきなトップ2チームです。しかし準々決勝のパリ・サンジェルマン戦は、メッシがバルサの試合でどれほど決定的な役割かを示しました。バルサの試合はボール支配とサイドでのプレーから成り立っています。しかしいつの間にか前へ移行している。そしてまさにそれがリオネル・メッシの信じられない能力によるものなんです。バイエルンがどのようにメッシをコントロールできるかにかかってくるでしょう。それができればバルセロナはどんどん無駄に走ることになり、神経を消耗させる。そうなればバイエルンは自らの攻撃力によって好機を得ることになります。バルサはそうすると後ろで問題を抱えることになります。バルサが当たり前のように、レギュラーのDFが負傷した際に「6番(ボランチ)」をセンターバックに持っていくのには驚きます。それがまたよく機能しますが、バイエルンと比べると、バルセロナは守備で大きな弱点があると思います。

聞き手 ディートマー・ノルテ(Dietmar Nolte)

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