シュトゥットガルト戦を前に

自分は能力を出し切れていない



TSG1899ホッフェンハイムの練習。選手のミスをその場ですぐ指摘するマーコ・クアツ監督が叫ぶ。「タカシ、もっと切り替えを速く!」。宇佐美はうなずく。「切り替え」――攻撃から守備へ、またその逆方向への瞬時の切り替えは、現代サッカーにおいて勝利への鍵を握る必須条件だ。攻撃の選手には特に、ボールを失ってから素早く守備へ切り替える能力は欠かすことのできない要素。ホッフェンハイムで左サイドハーフを務める宇佐美にとってもだ。「タカシの強みはドリブル。鋭い切り返しからペナルティエリア内に入り込み、右足でのシュートに持ち込めるなら」と話すクアツ監督は、宇佐美の場合、守備への切り替えの速さではまだまだ、と考えている。これは練習中に繰り返される宇佐美への指導にも見て取れる。

クアツ氏がホッフェンハイムの監督に就任したのは冬季中断期間中のこと。今季成績が低迷するチームを2部降格から救うことが使命だ。昨年12月2日のブレーメン戦での完敗後に解任されたマークス・バベル前監督は今季開幕前、来季の欧州リーグ出場権獲得を目標に掲げていた。ふたを開ければリーグ最多失点という事実。勝ち点が取れず、残留争いの渦中に。クアツ監督の急務は守備の安定だ。冬季移籍期間は積極的な補強も行われ、6人が新加入。後半戦の4試合でチームは勝ち点4を獲得したが、順位がぐっとアップしたわけではない。クアツ監督の指揮のもとこれまで全試合先発を果たしている宇佐美は、苦しいチーム状況にも「後半戦では失点が大幅に減った。このままいけば、1部残留は可能」と確信している。

「監督交代は自分には良かった」



「監督交代は自分には良かった」と、クラブの練習施設でインタビューに応じた宇佐美は言う。「いまの監督は、自分のポジションで何をすべきなのかをはっきり言ってくれる。守備への速い切り替えも、そのひとつ。自分はでも、今季は攻撃面で能力を出し切れていない」と自身の反省点を挙げる。前半戦はロンドン五輪参加で遅れたチーム合流の影響が見え隠れした。後半戦に向けた準備にはフルで参加した。「コンディションはいい」と言う。ミュラー・スポーツディレクターによると、シャイな印象の宇佐美からポルトガル合宿では笑顔も見られたと言う。この話題を振ると、宇佐美は照れたような表情を見せた。

まだ20歳。この年齢で質の高いパフォーマンスをコンスタントに見せられる選手は少ない。ブンデスリーガ2年目となる今季、何度かその才能の片鱗を示した。バイエルンで過ごした昨季は激しい定位置争いに勝ち残れず、リーグ戦出場は2回にとどまった。だが宇佐美にはどうしてもブンデスリーガに残りたいという思いが強く、ガンバ大阪から期限付きで今度はホッフェンハイムに移籍した。

「ブンデスリーガでは要求されるレベルがすごく高いし、体の当たりが激しいサッカーは自分にとっては、むしろ不利だと思う」と宇佐美。しかし、だからこそ自身が成長するための場としては理想的なのだ、と語る。目標は2014年のW杯ブラジル大会で日本代表に招集されること。A代表デビューはまだ果たせずにいるが、日本サッカー協会とのコンタクトは常にあると言う。

同僚ともドイツ語で会話



今季はホッフェンハイムでこれまで17試合に出場し2得点。バイエルンに所属した昨季に比べれば出場機会ははるかに多いが、クラブの成績は開幕当初から低迷。「(シーズン前に)思っていたのとは違う展開だし、プレッシャーはある」と言う。ハイデルベルク在住の宇佐美は時折、乾貴士のいるフランクフルトに足を運び、夕食を共にするそうだ。またチーム内でプライベートでも仲の良いのは、デンマークのユース代表DFベスターガード(20)で、ドイツ語で会話するという。クラーマー元暫定監督から槍玉に上げられることもあったドイツ語だが、週2回の授業を通しどんどん上達しているようだ。

ホッフェンハイムにとって、今週末にホームで行うシュトゥットガルト戦は今後の行方を占う重要な一戦。第5節のアウェーでの対戦でホッフェンハイムは3-0で勝利し、宇佐美自身も今季最高のパフォーマンスを見せた。「シュトゥットガルトもスランプだし、うちがここ数試合でも見せたような気迫で立ち向かえば、勝機は十分にある」と宇佐美も意気込む。敗戦だけは、これ以上許されないだろう。

Tobias Schächter (トビアス・シェヒター)