Summary

  • ダルムシュタットが2試合を残して降格
  • 崖っぷちの状況からクラブ史上初の3連勝を達成
  • 降格が決まった試合でもバイエルン相手に善戦

降格に対する失望は限りなく大きい。それでもミュンヘンで戦い切った選手たちには、それを超える誇らしさがあった。試合終了からだいぶ時間が経ち、人もまばらになったアリアンツ・アレーナに、「アウェー勝利! アウェー勝利」と叫ぶように歌う小さなグループの姿があった。それが降格という現実をより鮮明に映し出していた。

ダルムシュタットは敵地でバイエルン・ミュンヘンに惜敗し、2試合を残して2部への降格が決まった。「時間の問題だということは分かっていた」。トーステン・フリンクス監督はその時が確実に迫っていることを悟っていた。だが、チームは崖っぷちに追い込まれてから、クラブ史上初の3連勝を記録。残留は叶わなかったが、「何としても胸を張ってピッチを去りたい」という思いは実現した。

王者に堂々と立ち向かった誇らしい敗戦

タイムアップの笛が鳴った時、ピッチに崩れ落ちる選手がいなかったのも、自分たちのパフォーマンスに誇りを感じていたからこそだろう。この試合でダルムシュタットが放ったシュートは13本。今季、バイエルン相手にミュンヘンでこれだけのシュートチャンスを作ったのは彼らだけだ。「勇気を持ってプレーすれば、チャンスを作れるはずだと分かっていた」。フリンクス監督の狙いを選手はピッチ上で体現した。

1点を追う86分にはPKをもらい、起死回生のチャンスも訪れた。しかし、古巣対決となったハミト・アルティントップのシュートはバイエルンのGKトム・シュターケに止められた。「よりによってハミトが失敗してしまったのは残念だった。ただ、最近のパフォーマンスを見れば、キッカーはハミトしかいなかった」。フリンクス監督はそう言ってアルティントップをかばった。

試合が終わると、監督は選手たちをピッチに集めた。その時のことを、マーセル・ヘラーは次のように明かした。「監督は僕らのことをこれ以上ないほど誇りに感じていると言ってくれたんだ」

ウィンターブレーク中にフリンクス監督が引き受けたチームは、前半戦で勝ち点を8ポイントしか獲得できず断トツの最下位に沈んでいた。「大事なのはトーステンと一緒にやった半年で、サッカーの楽しさをもう一度見いだせたことだ」。困難が約束されているような役回りを受け入れ、チームを再生した監督にキャプテンのアイタック・スルは感謝を述べた。

“再生工場”が生み出した一体感

3部リーグに所属していた4年前には、あわやレギオナールリーガ(4部相当)へ降格という危機も経験した。しかし、その翌シーズンに2部昇格を果たすと、2014/15シーズンには一気に1部へと昇格。チームの象徴である団結力と情熱、そして闘争心で、誰も予想しなかったようなサクセスストーリーを演じた。

そのプロセスでクラブが得たのは選手との一体感だった。他のクラブでつまずいた選手たちに二度目のチャンスを与える。ダルムシュタットはそんな場所だった。いい例がサンドロ・ワーグナーだ。昨季、ダルムシュタットでゴールを量産してチームを残留に導いたストライカーは、今季もホッフェンハイムで大活躍。その活躍はいまさら説明するまでもないだろう。

チームはすでに来季に向けて動き始めている。サンドロ・シリグ、ファビアン・ホラントとの契約を延長したほか、2014年ブラジル・ワールドカップの優勝メンバーでもあるケビン・グロースクロイツの加入も決まった。スルはネームバリューのある新戦力に、「グロースクロイツがウチに来るなんて驚いた。彼のクオリティーはチームに大きなプラスになるはずだ」と大きな期待を寄せている。

ファンに最後のプレゼントを

腰を据えて来季のプランを練る前に、まだやるべきことが残っている。5月13日には今季最後のホームゲームが控えている。ダルムシュタットのホームスタジアムは昨年3月に腫瘍で亡くなったサポーターの名前を取って、「ヨナタン・ハイメス・シュターディオン」と命名され、チームは「君は戦わなければいけない」をモットーに戦ってきた。ヘルタ・ベルリンを迎える第33節は、きっとその言葉どおりのパフォーマンスを見せてくれるはずだ。

「選手たちは最後まで戦い、全力を出し切ってくれた」。ミュンヘンでの敗戦後、指揮官は選手をねぎらうとともに、応援し続けてくれたサポーターに最後の恩返しを約束した。「この先も勝ち点が取れるよう精一杯やるだけ。サポーターにあと1勝か2勝プレゼントできるようにね」