Summary

  • アンチェロッティが就任1年目でリーグ制覇を達成
  • グアルディオラ監督時代とは異なるアプローチ
  • アンチェロッティが成功を収めたポイントを分析

ロベルト・レバンドフスキが2ゴールを挙げてバイエルン・ミュンヘンがリーグ優勝を決める。どこかで見覚えるのある光景だ。2016年5月7日、レバンドフスキはインゴルシュタット戦で2ゴールを決めてペップ・グアルディオラ監督にバイエルンでの最後のリーグタイトルをもたらした。それから約1年後、ウォルフスブルク戦で2ゴールを挙げて、今度はカルロ・アンチェロッティ監督にドイツでの初タイトルをもたらしたのである。

似たようなシチュエーションで優勝を決めたとなれば、グラルディオラの最後の1年とアンチェロッティの最初の1年にはさほど優劣がないようにも思える。しかし、詳細を見ていくと、アンチェロッティが昨季よりも早く優勝を決めた要因が浮かび上がる。まず最初はベテランの経験を信頼したこと。2つ目はアリアンツ・アレーナにリラックスした雰囲気を作り出したこと。そして3つ目は、戦術に効果的な微調整を行ったことである。

1)ベテランの重用

イタリア人監督であることが影響しているのかもしれないが、アンチェロッティは合計年齢が135歳にもなるシャビ・アロンソとフィリップ・ラーム、アリエン・ロッベンとフランク・リベリを起用し続けた。そして、選手たちは監督の信頼に見事に応えてみせた。シャビ・アロンソとラームは思考スピードの速さが足の速さに勝ることを毎試合のように誇示。一方の“ロベリー”も改めて得点力の高さを示し、昨季の合計6得点から大幅増の合計15得点とゴールを量産した。

アンチェロッティがベテランを重用するのは驚くことではない。これまでもパオロ・マルディーニ、フィリッポ・インザーギ、ディディエ・ドログバ、ミヒャエル・バラック、フランク・ランパード、イケル・カシージャス、ペペなど、30歳を超えた選手たちを重用して優勝を経験している。

また、アンチェロッティはベテランを信頼するだけでなく、若い選手との融合も進めた。レナト・サンチェスこそ満足のいく活躍はできなかったが、ヨシュア・キミッヒは自身のシーズン最多得点を更新。また、ウォルフスブルク戦で活躍したキングスレイ・コマンはバイエルンとの契約を延長している。

チーム内で抜群の影響力を発揮したベテランのロッベンとリベリ

2)リラックスした雰囲気作り

アンチェロッティの自伝には『静かなリーダー』というタイトルがつけられているが、彼はアリアンツ・アレーナと練習場にリラックスした雰囲気を作り出した。これが2つ目の成功の要因であり、リラックスした雰囲気があったからこそ、アンチェロティは成功できたと言える。

グアルディオラは日々のトレーニングから緊張感溢れる戦術練習を行う監督だった。それとは対照的に、アンチェロッティは選手に自由を与えてチームを作ってきた。開幕前、サポーターは57歳の指揮官の手腕を楽しみにしていたが、アンチェロッティはすぐにその期待に応えた。リーグ開幕戦でブレーメンを6ー0で一蹴。その後も足を止めることなくゴールを量産していった。

第31節終了時点でバイエルンが挙げた得点は「79」。3試合を残していることを考えれば、グアルディオラ率いるバイエルンが2015/16シーズンに達成した「80」ゴールを超えることは間違いないだろう。レバンドフスキは28得点を挙げ、今季も得点王を争っている。昨季の30得点超えも可能だろう。

リベリもまた、アンチェロッティ監督に自由を与えられて輝いた選手の一人だ。シーズン序盤のインタビューでは、「新監督のためなら芝生だって食べてみせる」と忠誠心を示していた。「アンチェロッティ監督は選手を管理する方法を分かっている。彼がチームを率いてくれてうれしい。彼こそ、俺たちに合っている監督だ」。その言葉どおり、リベリは昨季の倍のゴールを決めている。

昨季よりも出場機会が減ったトーマス・ミュラーもいつもと変わらず優勝を喜んでいるし、バイエルンのカールハインツ・ルンメニゲCEOもアンチェロッティの手腕を高く評価している。優勝決定後、「カルロは経験豊富で傑出した監督だ。今季は非常によくやってくれた。彼がいなければ、3試合を残した状況で優勝することはなかったと思う。全面的に信頼を置くことができる監督だよ」と語っている。

アンチェロッティのリラックスしたチーム作りは選手たちにも好評だった

3)効果的な戦術変更

アンチェロッティ監督は選手に自由を与える一方、数は少ないが効果的な戦術変更を行った。経験のある選手を好み、ロッベンとリベリを両サイドで復活させた。ロッベンを右、リベリを左と利き足と逆の位置に配置して中央に切り込ませる。これによってゴールが量産されるだけでなく、ラームとダビド・アラバがオーバーラップするスペースを作り出す。この2人もまた、チームに活力を与えることになった。

リベリとロッベンが空けたサイドのスペースに駆け上がってきたラームとアラバは、レバンドフスキ、そして中央に絞ったロッベンとリベリに数え切れないほどのクロスを送り続けた。ドグラス・コスタとコマンがワイドに張ったままのグアルディオラ体制時と比べると、ペナルティーエリア周辺でクロスに合わせる選手が2人増えたことになる。

さらに、ティアゴ・アルカンタラが典型的な10番の役割を担うことになった。レバンドフスキの背後でプレーして5得点5アシスト。2013年にバイエルンに移籍してから最高のシーズンを送った。

最初に述べたようにレバンドフスキは今季も大爆発。アンチェロッティが再び優勝を味わいたいのなら、来季もシーズン終盤に1試合2得点を挙げてもらえばいいのかもしれない。もっとも、それらとは関係なく、アンチェロッティは静かに、そして成功した監督として歩んでいくだろう。

アンチェロッティ監督の下、ブンデスリーガでキャリア最多の5得点を上げたキミッヒ