Summary

  • 今季限りで現役を引退したバイエルンのラーム
  • 15年の現役生活で輝かしいキャリアを築いた
  • ドイツサッカー界のレジェンドとして今後の動向が注目される

ブンデスリーガの顔として活躍してきた偉大な選手がまた一人、現役生活に別れを告げた。シュトゥットガルト、バイエルン・ミュンヘンでプレーした15年間で公式戦652試合に出場。通算8度目、自身にとって最後のマイスターシャーレを手にフィリップ・ラームがユニフォームを脱いだ。

現役最後の試合となったフライブルク戦の後、ラームは赤と白の紙吹雪の中、熱狂的なサポーターが集まる南側スタンドへ歩み寄って「さよなら」を伝えると、マイスターシャーレを手に4歳の愛息ユリアン君、そしてクラウディア夫人とともに写真に収まった。「これで最後だと思うと、どうしようもなく気持ちが高ぶった。チームメートと過ごしたロッカールーム、そしてサポーターのいるスタンド。ここで経験させてもらったことに感謝したい」

28年前に始まった輝かしいキャリア

ラームの輝かしいキャリアは今から28年前の1989年、両親が幼いフィリップをミュンヘンのFTゲルンに入団させた時に始まった。1995年、11歳になったフィリップ少年は名門バイエルンの門を叩き、そこで技を磨いた。19歳の時にシュトゥットガルトに期限付き移籍すると、フェリックス・マガト監督の下でその才能が一気に開花した。

バイエルンではブンデスリーガと欧州チャンピオンズリーグで優勝を果たし、ドイツ代表としても世界一に輝いた。数々のタイトルを手にしてきたラームにとってのキャリアのハイライトは、ドイツに4度目の栄冠をもたらした2014年のワールドカップと、3冠を成し遂げた2013年だろう。ラームはいずれもキャプテンとして誇らしげにカップを掲げている。

「ピッチに立つことは僕の人生そのものだった。サッカーは大きなファミリーだと思っているんだ。ファン、そしてクラブに関わるみんなと一緒に、目標に向かって進んでいく。それも今日で最後だけど、この先、何よりも懐かしいと思うのはこのファミリーのことだろうね」。ラームはそう言って、強い絆で結ばれていたチームメート、サポーター、クラブスタッフとの別れを惜しんだ。

レジェンドの系譜を受け継ぐ存在

ラームは“皇帝”フランツ・ベッケンバウアーや1954年のW杯初優勝の立役者となったフリッツ・ワルター、ドイツ代表として歴代最多の150試合に出場したローター・マテウスに匹敵するほどの大きな存在としてドイツサッカー界に君臨した。この4人に共通するのは、キャプテンとして世界の頂点に立っていることだ。

辛口で知られるカールハインツ・ルンメニゲ社長も、ラームに関しては「ピッチ内外を問わず、彼が何か間違ったことをしたという記憶はない」と、その完璧ぶりを絶賛する。「間違いなく世界のベストプレーヤーの一人」。そう断言するのは、サイドバックであれ中盤であれ、ワールドクラスのプレーで起用に応えてくれるラームに絶大な信頼を寄せていたドイツ代表のヨアヒム・レーウ監督だ。

バイエルン前監督のペップ・グアルディオラは、「これまで私が指導してきた中で最もクレバーな選手。彼は間違いなくレジェンド級の選手だ」と、最大級の賛辞を送る。また、3冠達成時の指揮官ユップ・ハインケスは、「ドイツのサッカーにとってまたとない存在」と評する。

アマチュア時代の恩師でもあるヘルマン・ゲアラントは、ラームが一人の人間として非の打ちどころがなかったと振り返る。「ピッチを離れたところでも完璧な選手。身長の低さや落ち着いた性格ゆえに過小評価されることも多々あったが、苦境に妥協することなく立ち向かっていくし、興味を持ったことにはとことん打ち込んでいた」。そのキャリアを並走した誰もが、ピッチを離れた立ち居振る舞いも含めて稀代の名選手と称えている。

今から待ち遠しい「お帰りなさい!」

誰もが気になるのが、ラームがこれから歩む道だ。バイエルンはすぐにスポーツディレクターの職をオファーしたが、本人はこれを固辞。今後については白紙の状態だ。「まずはバカンスに出る。その先は何が起こるかな」。第二の人生に自身もワクワクしているのかもしれない。現役時代から熱心だったチャリティー活動に一層の力を注ぐのはもちろん、間もなく誕生する第二子を含め、家族との時間も大切にしていくつもりだ。

「引退して最初の3カ月は素晴らしい。しかし半年も経つと退屈し始め、8カ月を迎える頃には何かできることはないかと考え始めるものだ。彼もきっとそうなるはず」。ルンメニゲ社長は自身も経験した隠居生活をこう表現した。分かりやすい期待をチラつかせた社長とは対照的にウリ・ヘーネス会長は、「彼にはいつでもドアが開かれている」と直球でアプローチ。レジェンドのクラブへの帰還を誰もが心待ちにしている。