Summary

  • バイエルンが22歳のフランス人MFトリッソを獲得
  • 2013年のデビュー以来、4シーズンにわたってリヨンでプレー
  • 今年3月にはフランス代表デビュー

バイエルン・ミュンヘンが獲得した22歳のフランス代表MFコランタン・トリッソは、タレントがそろうバイエルンの中盤でポジション争いに割って入る可能性があるのだろうか。シャビ・アロンソが引退したとはいえ、バイエルンの中盤にはすでにアルトゥーロ・ビダルとティアゴ・アルカンタラ、ヨシュア・キミッヒとレナト・サンチェスがいる。さらにホッフェンハイムからゼバスティアン・ルディも獲得し、来季の戦力は十分にそろっている。

しかし、カルロ・アンチェロッティ監督とクラブは、2022年までの契約でトリッソを獲得し、強力な中盤に若手有望株を加えた。22歳のMFは将来を見越した戦力なのか、あるいはすぐにレギュラー争いに食い込んでくるほどの実力者なのか。トリッソの実力を分析する。

“スイス・アーミーナイフ”

2013年にリヨンでプロデビューを飾ったトリッソは、敵陣のペナルティーエリアから自陣深くまでをカバーする万能MFとして才能を発揮してきた。実際のところ、トリッソはこれまでのキャリアであらゆるポジションをこなしている。スタッド・アンプルプルジアンでFWとしてサッカーを始め、FCペイドゥラルブレルではポジションを中盤に下げた。リヨンのユース時代はDFとしてプレーしたこともある。

リヨンでの最初のシーズン、ウベール・フルニエ監督はトリッソを左右のサイドバックやセンターバック、守備的MF、セントラルMFとして起用。しかし、トリッソ自身が最も気に入っているのは中盤のセンターだ。2014/15シーズンのインタビューでは、「DFの前でプレーするのが好きだ」と語っている。このシーズンはリーグ・アン全38試合に出場。「自分の前でゲームを動かすのが好きだし、その能力があると言われている。さらに前の位置、8番の役割でプレーするのも好きだよ。前線まで上がって得点することができるからね。ゴールを決めるのは本当に好きなんだ」

得点能力

ゴール前におけるトリッソの能力は、来季のチーム編成において未知の要素となるだろう。昨季はキャリア最多となる公式戦14ゴールをマーク。また、ビッグゲームで物怖じしないところも見せ、欧州チャンピオンズリーグ(CL)のグループステージではユベントスから得点を奪った2選手のうちの一人となった。欧州リーグ(EL)準々決勝ファーストレグのベシクタシュ戦では重要な同点弾も決めている。

興味深いことに、リヨンがトリッソに注目したきっかけはその得点力だった。11歳の時にラルブレルの選手としてリヨンと対戦し、ハットトリックを達成。それが2年後のリヨン加入につながった。不思議な偶然もある。リヨンのジャン=ミシェル・オラス会長はラルブレルの生まれであり、トリッソをリーグ・アンでデビューさせたレミ・ガルド監督もラルブレル出身である。

今季のバイエルンは得点のほとんどをロベルト・レバンドフスキ(30得点)とアリエン・ロッベン(13得点)に頼ってきたが、アンチェロッティ監督は点が取れるMFをメンバーに加えることができて喜んでいるはずだ。既存メンバーもキミッヒとティアゴが6得点、ビダルが4得点と十分に責任を果たしたが、トリッソの加入で新たな競争が生まれる可能性もある。

絹と鋼鉄

トリッソはリヨンのユースアカデミーが輩出した才能溢れる若手世代に属しているが、アレクサンドル・ラカゼット、ナビル・フェキル、クレマン・グリニエに比べると注目を浴びるのが遅かった。父親のバンサン・トリッソは息子についてこう語っている。「息子は地道で、地に足がついているタイプ。自分が幸せな気持ちになれるからサッカーをしているのであって、注目を集めたいからプレーをしているわけではない。世間の人たちは、ウチの息子のような地味なヒーローについてはあまり話題しない。でも、私はそういうことは気にならない。謙虚でいることが第一だ。できるだけ長く持ち続けるべき資質だよ」

2015年9月、トリッソに対する評価が変わる出来事があった。父親が言うように、それまでは基本的に目立たない選手だったが、絹のような柔らかいボールタッチの内側に鋼鉄の芯が通っているところを披露した。それはレアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督が現役だった頃のようだった。

トリッソは練習場でフェキルやリンゼイ・ローズとケンカしたこともある。さらに、2017年2月にも悪いニュースでメディアを賑わすことになった。サンテティエンヌとのダービーでファビアン・ルモワーヌに対して激しいタックルを見舞い、レッドカードと2試合の出場停止処分を受けた。しかし、このことでトリッソは重要なことを学んだという。

「試合の終盤で完全に冷静さを失っていた。ひどいタックルで本当に申し訳ないと思っている。ファビアンに謝りたい。二度と同じことを繰り返さない」

このダービーでの出来事を別にすれば、トリッソのピッチ上での振る舞いは称賛されている。そのレッドカード以来、警告は1枚のみ。また、2013年に社会学と経済学で学位を得るなど、ピッチの外でも真面目な青年だ。父親もトリッソが学位を取ったことを喜んでいる。「常に優先すべきは学校に行くことだ。いつかはサッカーを辞めなければいけないし、不確実なことばかりだからね。息子は学士号を取ると約束をしてくれた。学位が取れた時はプロ選手として最初の契約を結んだ時と同じくらい幸せだった」

明るい未来

トリッソはキミッヒ(22歳)やサンチェス(19歳)、キングスレイ・コマン(21歳)とともにバイエルンの将来を担っていくべき逸材だ。シャビ・アロンソとフィリップ・ラームがそうだったように、ロッベンとフランク・リベリがキャリアを終える日もそう遠くはない。バイエルンは現在、ブンデスリーガ5連覇中と国内では無敵だが、ライバルのドルトムントに比べると若手の層は薄い。次世代のスター選手を植え付けていかなければならない。

バイエルンにはフランス人選手の象徴と言える2人の先輩がいる。リベリとアシスタントコーチに就任したばかりのウィリー・サニョルだ。2人が獲得したタイトルの合計は「23」(ブンデスリーガ12回、DFB杯9回、CL2回)。野心を抱いている若い選手にとって完璧な助言者となるだろう。

今季終了後、トリッソは「CLでプレーし、ワールドカップに行きたい。ロシアに行くためにはビッグゲームで経験を積む必要がある」とフランスのメディアに語っている。昨季のリヨンの成績はリーグ・アンの4位。トリッソがCLに出場するためには移籍するしかなかった。昨夏、ナポリからオファーが届いた時は「準備ができていなかった」と認めているが、バイエルンからの誘いに抗うことなどできなかった。

バイエルンの公式サイトでトリッソはこうコメントしている。「リヨンで素晴らしい日々を過ごすことができて感謝している。今はヨーロッパで最高のクラブに移籍ができてうれしく思っている。大きな目標を持ってバイエルンにきた。今日は僕にとって最高の1日だ」

フランス代表としては3月に行われたスペインとの親善試合に出場しただけだが、先日行われたパラグアイ、イングランドとの親善試合にも招集されていた。W杯ロシア大会まで1年となったが、ディディエ・デシャン監督の視野には間違いなく入っている。そして本人は、バイエルンでの成功が代表で活躍するチャンスにつながることを願っている。

中盤のあらゆるポジションをこなし、ゴールも奪えるMFと、成功へ向けて飽くなき情熱を抱くドイツ最大のクラブ。絵に描いたような最高の組み合わせだ。