熱い闘志、激しいボディーコンタクト、度々受ける警告や退場処分ーーバイエルン・ミュンヘン、そしてドイツ代表の最終ラインを司るジェローム・ボアテングのイメージといえばそんなところだろうか。

10月4日、香川真司の所属するドルトムント対バイエルンの「デア・クラシカー」がミュンヘンの地で開催された。両クラブのプライドをかけた一戦というだけでなく、今シーズンの優勝争いを占う首位対2位の頂上決戦だっただけに、試合への注目はいやが上にも集まったが、そんな大舞台でボアテングは自身のキャリア初となる1試合2アシストをマークしたのだった。

しかし、同選手は「レビー(ロベルト・レバンドフスキ)へのロングパスがうまくいって良かった。2回も成功するなんてうれしいよ」と、あくまで冷静にコメント。ピッチ外の同選手は、派手さを好まない物静かな青年として知られている。


“皇帝”と重なる姿

ショートパスと同じように、ロングキックの練習も普段から入念に行っているというボアテング。その絶妙なパスから得点を決めたレバンドフスキとトーマス・ミュラーはそれぞれ「卓越している」(レバンドフスキ)、「あれこそが彼のクオリティーだ。彼はCBであのようなビルドアップができる。他とは比較できないよ」(ミュラー)と、賛辞を惜しまなかった。特にミュラーは、バイエルンの名誉会長を務め、現役時代に“リベロ”という地位を確立したフランツ・ベッケンバウアー氏になぞらい、ボアテングに“カイザー(皇帝)”とあだ名を付けるほど。そして、その本家“皇帝”も「この2シーズン、ボアテングは世界でもトップクラスの活躍をしている」と褒めちぎっている。

周囲の評価は二の次

「僕にとって重要なことは、試合で高いパフォーマンスを出せるか、そして向上していくこと、それだけだ」と話すボアテングにとって、周囲の評価はあくまで二の次だ。また攻撃のスター選手ミュラーが冗談を交えるほど多弁であるのとは対照的に、ミックスゾーンでのボアテングは冷静かつ客観的。面白いコメントは期待できないが、真面目な同選手の人柄がよく現れている。例え「デア・クラシカー」のような試合において、ボールタッチ数(90回)、シュートにつながったラストパス数(3本)、パス成功数(66本)の3項目でチームトップの成績を収めようとも、控え目な姿勢が変わることは決してない。

“荒削りな選手”から「ベストな選手」へ

2011年、マンチェスター・C(イングランド)から加入した頃のボアテングは、荒削りな部分が残る選手だった。しかしユップ・ハインケス前監督の下でクラブに3冠をもたらすと、世界的名将ジョゼップ・グアルディオラ監督も「ビルドアップにおいてベストな選手の1人」と、従来の守備力だけでなく攻撃面でも大きな信頼を寄せるようになった。そんな同選手もこの9月に27歳となったばかり。今後一体どこまで成長を続けるのか、期待は高まるばかりだ。