Summary

  • ボルシアMGで日々成長を続けるトルガン・アザール
  • 常に兄エデンと比較されながらも、自らの実力で地位を確立
  • ベルギー代表では兄との共演も実現

メンヘングラートバッハ(ボルシアMG)に加入して4年目、ブンデスリーガで目覚ましい活躍を見せてきたトルガン・アザールは、今やベルギー代表で先発出場を飾るまでに成長した。これまで有名な兄エデンの陰に隠れてきた弟は果たしてどんなプレーヤーなのか。トルガン・アザールについて知っておくべき10項目を紹介する。

1)トルガンという名前の由来は…

世界的に有名な兄がいる場合、自分の力で名を上げるのは簡単なことではない。しかしトルガンの場合、少なくとも「風変わりな名前」と主張することができる。トルガン(Thorgan)という名前は、1970年代後半にベルギーの『タンタン・マガジン』で掲載されていた漫画『トルガル(Thorgal)』からきているという。物語は、別の惑星で生まれた主人公の宇宙船が地球に衝突し、地球でバイキングに育てられるというファンタジー。アザール家の子供たちの類いまれな才能はこれで説明がつくかもしれない。

2)家族

トルガンは兄エデンを含む4兄弟で両親もサッカー選手だった。父のティエリはラ・ルヴィエールというセミプロチームでMFとして活躍。エデンとトルガンはそのラ・ルヴィエールで生まれている。母のカリーヌもプロサッカー選手として6年間プレー。母親にとってもサッカーは身近なもので、「子供の頃、父に連れられて試合を観に行っていた。それから自分でもプレーするようになった」という。その後、体育教師となった両親は、「週末に子供たちの試合を観に行くのが楽しみ」と語っている。

3)サッカー・ママ

息子たちがプロサッカー選手を目指すようになったのは、母カリーヌの影響が大きかった。決して無理強いはしなかったが、父ティエリは「カリーヌが一番熱心で献身的だった」と明かしている。両親はエデンとトルガンの試合を観戦するために長距離ドライブを続けた。フランスとの国境から50キロの位置にある自宅から南に下り、ランスのユースに所属していたトルガンを見に行き、その後でエデンがプレーしていたリールへ向かった。両親はその道のりを“スタジアム通り”と名付けていたという。

4)分かれた兄弟の道

エデンがプレーしていたリールはトルガンの獲得を望んでいたそうだが、兄弟が同じチームに所属するのは、トルガンがチェルシーに加入する2012年まで待たなければならなかった。トルガンはユース時代をランスで過ごしたが、これについて本人は「僕がエデンと比較されるのを避けるため、両親は同じクラブに入れないほうがいいと思ったみたいだ」と振り返る。なお、ランスのUー16チームでは、現レアル・マドリードのラファエル・バランや現バレンシアのジョフレイ・コンドグビアと一緒にプレーし、2008/09シーズンに国内王者になっている。

5)エデンと同じクラブへ

トルガンは兄との思い出について、「小さい頃は僕がゴールを守り、エデンは気が狂ったように僕めがけてシュートを打ってきたよ」と話す。両親が警戒していたにもかかわらず、トルガンは2歳2カ月年上の兄と常に比較された。そして兄の後を追ってチェルシーに加入すると、さらに比べられるようになった。もっともトルガンは、チェルシーへの加入は自分の力だと主張する。「チェルシーが先にエデンを獲得していたことは、もちろん助けになったと思う。でも、兄弟だからといって誰の弟でも契約できるわけじゃない。フランク・ランパードやジョン・テリーの兄弟がチェルシーでプレーしたことはないんだからね」。チェルシーへの移籍が決まった時、トルガンはリーグ・ドゥのランスでしっかり実績を残していた。「チェルシーは僕に潜在能力があると判断して僕を獲得した。そのために移籍金も払ったんだ。それは正しかったってことだよね。エデンと同じような道ではないけど、僕は一歩ずつ成長している」

6)ズルテ・ワレヘムへ期限付き移籍

チェルシーでのキャリアが保証されていたエデンに対し、トルガンは加入後すぐに母国のズルテ・ワレヘムへ期限付き移籍で出された。兄と比べれば小さな舞台だったが、トルガンはベルギーリーグで活躍。2012/13シーズンに欧州チャンピオンズリーグ(CL)予選の出場権獲得に貢献すると、翌シーズンにはチーム2位の14ゴールをマークし、ベルギー年間最優秀選手に輝いた。この活躍を受け、クラブはキャプテンをベテランのダビー・デファウから当時20歳のトルガンに変更。しかし、これが大きな騒ぎとなり、キャプテンに任命されてから24時間も経たないうちにキャプテンマークをデファウに返すことになった。

7)ボルシアMGの選手に

ベルギーで成功を収めたトルガンはチェルシーに復帰したが、直後に再びヨーロッパ大陸に向かうことになる。新たな所属先となったのはブンデスリーガのボルシアMGだ。当初の契約は1シーズンの期限付き移籍だったが、トルガンはドイツでも実力を発揮。マックス・エベールSDらの信頼を勝ち取り、2015年2月、推定800万ユーロの移籍金で完全移籍を果たした。

8)ベルギー代表

トルガンはベルギー代表のマーク・ビルモッツ監督によって2013年に初招集を受けると、5月29日のアメリカ戦で代表デビュー。アザール家2人目の代表選手が誕生した。翌年のブラジル・ワールドカップ、昨年の欧州選手権では兄エデンとの共演は叶わなかったが、2016年11月のオランダ戦でついに兄弟共演が実現。今月10日のキプロス戦では代表で初の先発出場を果たし、エデンが2得点、トルガンが1得点を挙げ、アザール家にとっては忘れられない夜となった。

9)兄弟愛

今季開幕前、トルガンは「僕たちは兄弟だけど代表ではライバル同士だ」と話していたが、2人の関係は子供の頃にエデンがトルガンめがけてシュート練習していた頃と何ら変わっていないようだ。2014年にトルガンがベルギー年間最優秀選手賞を受賞した時、エデンは弟について次のように語っていた。「兄がすでに結果を出していて、常に比較されるのは簡単なことではない。トルガンのほうがより大変な状況なのだから、僕よりも称賛されるべきだよ。僕の場合は何もかもがあっという間に起きた。キャリア初期にいい試合ができたからね。一方、トルガンは『エデンの弟』と言われることと常に戦わなければならなかった。そして自分の力で成功をつかんだんだ」

10)アザール王朝

トルガンやエデンと対峙したことがあるDFは、今ごろ頭を悩ませているに違いない。なぜなら、この2人以外の“アザール”とも将来的に戦う可能性があるからだ。アザール兄弟は三男と四男もすでにサッカー界で活躍中。その一人がリールのユースで育った22歳のキリアンだ。キリアンはズルテ・ワレヘムやハンガリーのウーイペシュトでプレーしていたが、この夏からチェルシーのUー23チームに所属。周囲からは「エデン以上の逸材」と言われている。キリアンより7歳年下の末っ子エタンも、トルガンによれば「ゴール数とアシスト数を数え始めた」という。アザール家ではシーズンのゴール数とアシスト数の合計が一番少なかった選手が、家族全員にご馳走する決まりになっている。「エタンは貯金が必要だね。でも、兄貴たちが助けることになるかな」とトルガンは笑っていた。