Summary

  • 25歳で選手としてのキャリアを断念。指導者の道へ
  • マインツをクラブ史上初のEL出場権獲得に導く
  • ドルトムントではリーグ戦でのホーム無敗を継続中

ドルトムントのトーマス・トゥヘル監督は、チームを2シーズン連続で欧州カップ戦の準々決勝とドイツサッカー連盟カップ(DFB杯)の決勝へと導いた。同世代のドイツ人指導者の中で、最も優れた監督の一人に数えられるトゥヘルは、これまでどんなサッカー人生を歩んできたのだろうか。

マインツをクラブ史上初のEL出場に導く

1973年8月29日生まれのトゥヘルは、TSVクルムバッハのユースチームでサッカー選手としてのキャリアをスタートさせた。その後、当時4部だったアウクスブルクに加入し、1992年には2部のシュトゥットガルター・キッカーズで8試合に出場、3部のSSVウルムでは69試合に出場した。

慢性的な膝のケガが完治せず、プレーヤーとしての道は25歳の若さで諦めたが、トゥヘルのサッカー意欲は増すばかりだった。ウルム時代の監督だったラルフ・ラングニックから刺激を受け、シュトゥットガルトのUー19チームで指導者キャリアをスタート。5年後にはアウクスブルクに移り、ユースチームのコーディネーターとして3年間経験を積む。その後、マインツのUー19チームの監督に就任し、その年の国内大会で優勝を飾ってにわかに注目を集めた。

その後、マインツのヨルン・アンデルセン監督が解雇されると、トップチームでの監督歴がないにもかかわらず、後任として大抜擢。トゥヘルはブンデスリーガの新米監督として、デビューシーズンを9位の好成績で終えた。さらに、2シーズン目の2010/11シーズンにはバイエルン・ミュンヘンからの金星を含む開幕7連勝を達成。最終的に5位でシーズンを終え、クラブ史上初の欧州リーグ(EL)出場権を獲得した。

マインツ時代のトゥヘルは2011年のDFB年間最優秀監督賞に輝くなど、ドイツで最も優れた若手監督という評価を得ていた。独自の理念に基づきながらも、状況に応じて頻繁にシステムを変更。そんな自身のサッカー感についてトゥヘルはこう語っている。「もちろん、自分自身のスタイルはある。マインツでやったことは、前へ速く仕掛ける攻撃的なサッカーだった。私は質の高いプレー、活発なプレースタイル、しっかりとした守備、そして攻撃では速いプレーを好んでいる」

初のヨーロッパ挑戦は予選3回戦でルーマニアのCSガズ・メタン・メディアシュに敗れて早々に終了。2011/12シーズンからは2シーズン連続で13位に甘んじることになったが、2013/14シーズンには最終節でハンブルガーSVを下して再びEL出場権を獲得する。ところが、それから1日も経たないうちにトゥヘルは1年の任期を残して監督を辞任。1年間の休養に入ることになった。

クロップの後任としてドルトムントへ

トゥヘルはマインツ史上最も成功を収めた監督だ。1試合の平均勝ち点は「1.41」。これはマインツをブンデスリーガ昇格に導いたユルゲン・クロップの「1.13」を上回る。トゥヘルの後任を務め、1年足らずで解任されたカスパー・ヒュルマンドは「1.05」。トゥヘルの在任期間中、マインツはリーグ戦で65勝44分け61敗と勝ち越し、170試合で229ゴールを挙げている。

1年間の休養期間が終わりが近づいた2015年4月19日、トゥヘルはクロップの後任としてドルトムントと3年契約。クロップは奇しくもマインツのUー19チームを指揮していた時のトップチームの監督である。

クロップとトゥヘルのキャリアには類似点が多い。だが、トゥヘルは指導者としての多くをペップ・グアルディオラの仕事ぶりから学んだという。「素晴らしいボールの動かし方、リオネル・メッシのような個人の使い方、今までに見たことがないほど勇気を持った守備。グアルディオラのバルセロナからサッカーについてのすべてを学んだ」

ドルトムントはクロップのラストシーズンを7位で終えるが、トゥヘルの就任後に見事に復調を果たす。2014/15シーズンは24勝を挙げて2位。リーグトップの82ゴールを挙げ、敗れたのはわずか4試合だった。ELでは準々決勝でリバプール(イングランド)に敗れたものの、どこからでも点が取れる圧巻の攻撃力でポルト(ポルトガル)やトッテナム(イングランド)を撃破した。DFB杯ではPK戦の末に決勝でバイエルンに敗れたが、就任1年目の成績としては悪くない。

トゥヘルは就任1年目に若手MFのユリアン・ワイグルやクリスティアン・プリシッチを主力へと成長させたが、2年目で彼に与えられた最も大きな仕事はチームを去ったイルカイ・ギュンドアン、マッツ・フメルス、ヘンリク・ミキタリアンの穴を埋める作業だった。トゥヘルはその答えとして、スペイン人DFのマルク・バルトラ、ポルトガル代表のDFラファエル・ゲレイロ、爆発的な攻撃力を持つウスマン・デンベレら若い才能を獲得。ヨーロッパで最も楽しいサッカーを継続した。

今季のCLでは昨季王者のレアル・マドリード(スペイン)を抑えてグループステージを首位通過。レギア・ワルシャワ戦では8ー4というド派手な撃ち合いを演じて話題を呼んだ。残念ながら準々決勝でモナコ(フランス)に敗れてしまったが、ブンデスリーガでは今季も4位以内を確保。DFB杯では3シーズン連続の決勝進出を決めている。2年前にクロップの下で危機に直面していたドルトムント。それを立て直したのは間違いなくトゥヘルの功績である。