Summary

・長谷部所属フランクフルトのコバチ監督独占インタビュー

・半年間で残留争いから上位争いへ

・現役時代を過ごしたバイエルン、弟ロベルトについても語った

長谷部誠が所属するアイントラハト・フランクフルトが好調だ。前節、宇佐美貴史のアウクスブルクに引き分け、4連勝こそならなかったものの、第6節フライブルク戦以来黒星を喫しておらず、見事上位戦線にとどまっている。昨季、チームを降格危機から救い出し、たった半年でチームを上昇気流に乗せたニコ・コバチ監督が、当サイト独語版との独占インタビューに応じた。

――半年前、2部3位との入れ替え戦に臨んでいた時と現在では、メンバーの顔ぶれにさほど違いはありません。しかし今の順位は5位です。多くの識者は驚きを覚えていますが、あなたにとっても同じでしょうか?

コバチ監督 確かに我々が5位にいるというのは驚きでしょうね。ですが、私個人にとっては、そうではありません。私たちはコンビネーション、戦術、テクニック、メンタルなど、すべての面で以前よりも良くなっているのですから。それに最も大きいのは、我々が継続してその作業を行っていることです。ダルムシュタットとフライブルクには負けてしまいましたがね。

――敗戦はあなたにとって喜ばしいことではないでしょう。しかし、フライブルク戦の後からフランクフルトは上向いています。あの敗戦が何かのきっかけになったのでしょうか?

コバチ監督 今振り返ってみると、フライブルク戦での負けが、チームを正しい方向に導いてくれたんだと思います。あの試合の後は何も話したくないほど怒りに満ちていました。予定していた試合運びが何もできなかったからです。あの敗戦で、我々は本当の意味で目を覚ましました。ブンデスリーガで成功をつかむためには、100%以下の力で臨むことなどありえないということを学んだのです。

――昨季と比べると、守備面での向上が顕著です。ここまでの失点数は、リーグ2番目の少なさですね。

コバチ監督 我々は、「毎試合3ゴールを奪うことは難しい」と分かっています。したがって、失点の数をできるだけ少なくすることが重要になってきます。今のフランクフルトは10人でしっかりと守り、その結果、11失点しか記録していません。このチームスピリットこそ成功の鍵でしょうね。私自身も長い間プロ選手でしたが、組織的な守備を持つ相手には本当に苦しめられましたから。

――シャルケドルトムントバイエルン・ミュンヘンのようなビッグクラブとも互角に戦い、フランクフルトは多くの尊敬を集めています。今ではその他のクラブも、フランクフルトに対する見方を変えているとお考えですか?

コバチ監督 そうであるといいですね。ブンデスリーガの全クラブはトップチームですが、私たちもホームでは類稀な強さを誇っていますし、2度引き分けただけで、ほぼすべてのホームゲームに勝っています。我々がすべての力を出し切れば、この強さは維持されるのです。残留争いに巻き込まれ背水の陣で戦っていた昨シーズンよりも、今の状況ははるかに良いですね。

――しかし、ポゼッションを諦め、とにかくリアクションサッカーに徹するようなクラブ相手には、厳しくなるかもしれません。

コバチ監督 確かにその通りでしょう。シャルケ、バイエルン、ドルトムント、ヘルタ・ベルリンレーバークーゼンなどのチームは、前へ行くことを目指して戦ってきます。しかし、彼らのようなクオリティーを持たないチームは、基本的に守備的な戦いを挑んでくるでしょう。フランクフルトは、そのような相手を崩していく手段を探しださなければいけません。しかし、それには長い時間を要します。「きょう取り組みだして、あす完成する」といったものではないですから。まだ半年くらいはかかるかもしれません。

――ある新聞は、「(レーバークーゼンの)シュミット監督は、フランクフルト戦で敗れた後、途方に暮れていた。(バイエルンの)アンチェロッティ監督も2ー2で引き分け、不満そうだった。(ドルトムントの)トゥヘル監督も1ー2で敗れ、困惑していた。コバチ監督はすべてをやってのけた」と書いていましたが、あなたにとっては“してやったり”という感じでしょうか?

コバチ監督 過大評価はしたくありませんが、選手たちはそれらのチームに対して巧みな試合運びをしてくれました。その新聞の評価を選手たちに伝え、彼らを褒め称えてあげたいですね。

――マルコ・ファビアンやサボルチュ・フスティなどは、メディアから疑問視されていた選手ですが、あなたは見事に成長させました。

コバチ監督 なんでもかんでも、常に同じ目線で考えてはなりません。今のサッカー界では、加入から半年間、または1年間、結果を残せなければ、すぐに「獲得したのは間違い」と判断されてしまいます。しかし、実際にはそうではないのです。例えばバイエルンなどは、どんな選手に対しても2年間は様子を見ますし、フランクフルトでも同じような扱いをするべきでしょう。ファビアンはまったく別のリーグからやってきましたし、気候条件だって全然違うんです。そのことをしっかりと考慮に入れなければいけません。フスティも中国でプレーしていましたが、ブンデスリーガとは違うんですから。

――今やファビアンはブンデスリーガでもトッププレーヤーの1人に数えられています。

コバチ監督 彼のクオリティーは、もう誰もが知っているでしょう。彼を見つけてきたスポーツディレクターのブルーノ・ヒュープナーと、当時のアーミン・フェー監督が良い目を持っているという証拠です。

――かつてバイエルンに所属していた者として、今季バイエルンがあまり良くないことについて、どう考えていますか?

コバチ監督 2位と勝ち点差10をつけて首位に立っていない限り、「バイエルンはあまり良くない」と言われてしまいます。しかし色んな状況を考えるべきでしょう。監督が変わり、夏には欧州選手権もあったため選手の合流も遅れ、そして負傷者も少なくありません。その中で彼らはブンデスリーガで2位にいて、さらに欧州チャンピオンズリーグ(CL)とドイツサッカー連盟カップ(DFB杯)も戦っているのです。もちろんバイエルンは、負けが許されないクラブですし、できれば5点差をつけて勝つことが求められるチームです。しかしサッカーはそう簡単ではありません。私は今季開幕前からこう言っていました。「バイエルンが優勝するだろう。だが、昨季のように2位に圧倒的な差をつけての優勝はない」と。今もその考えは変わりませんよ。

――ライプツィヒは、典型的な昇格クラブではありませんが、彼らの成績には驚かされましたか?

コバチ監督 「はい」と「いいえ」のどちらもですね。昨季ブンデスリーガ2部でチームは成長し、中にはザルツブルクでチームメートだった選手たちもいます。フレッシュなサッカーをコンセプトにし、若くて素晴らしいチームだと思います。しかし彼らが首位に立つとは誰も予想できなかったでしょう。私は6位か7位くらいには入ると思っていましたが、首位はまったく考えていませんでした。

――最後に弟さんのことです。ロベルト・コバチ氏はフランクフルトであなたの右腕を務めています。

コバチ監督 素晴らしい関係ですよ。誰か1人を信頼するとなれば、まずは弟です。なぜなら、これまでかなり長い時間を一緒に過ごしていますからね(笑) ロベルトと私はバイエルン、レーバークーゼン、そしてクロアチア代表でもともにプレーしましたし、彼の専門知識は大変豊富です。彼となら、フランクフルトを発展させることができるでしょう。そして、アーミン・ロイタースハーンもコーチとして招へいしたかったんです。彼は私がハンブルガーSVでプレーしていた時のコーチでした。もちろん私たちは常に同じ意見を持っているわけではありません。ディスカッションで対立することだってあります。ただ、最後に私の味方になってくれるのは、やはり弟ですね(笑)