Summary

  • 昨年9月に“暫定監督”としてブレーメンの指揮官に就任
  • 効果的なシステム変更や選手起用でチームを再建
  • 第21節からの11試合で9勝2分けの好成績をマーク

昨年9月にアレクサンダー・ヌーリがブレーメンの監督を引き受けた時、チームは開幕3連敗で最下位に沈んでいた。しかし、就任2戦目でシーズン初勝利をもたらした37歳の若き指揮官は、瞬く間にチームを立て直し、戦いのステージを残留争いから欧州リーグ(EL)出場権争いへと引き上げた。最終順位は8位とわずかにELには届かなかったが、シーズン終盤には一時6位まで浮上。文字どおりのV字回復を果たし、来季に向けて大きな楽しみを残してくれた。

暫定監督から救世主に

Uー23チームからトップチームの監督に昇格した当初、ヌーリは“暫定監督”という位置づけでしかなかった。だが、クラブが経験の浅い指揮官に白羽の矢を立てたのは、もちろん彼の資質を見込んでいたからこそ。フランク・バウマンSDは就任会見の席で、「彼がいつまで指揮を執るかは彼次第」と話した。

指揮官交代を機にチームは着実に成長を続け、ヌーリの“暫定”という肩書きはすぐに取り払われることになった。では、彼はブレーメンの何を変えたのか? 就任後すぐに着手したのがトップチームの“スリム化”である。また、アスレティックトレーナーとしてのキャリアを持つヌーリは選手のコンディションを最重要視。クラウディオ・ピサロとマックス・クルーゼの戦線離脱中に、セカンドチームから屈強なウスマン・マネーを抜擢したのは、そうしたコンセプトの表れでもある。

ヌーリの手法は見事にハマり、ブレーメンはウィンターブレークまでの13試合で勝ち点16を獲得。どこが相手でも対等に戦えるチームになっていた。最終ラインを4バックから3バックに変更して臨んだ後半戦はドルトムント、バイエルン・ミュンヘンといった格上との対戦が続いて年明けに4連敗を喫したが、チームは敗戦の中で着実に手応えをつかんでいた。そして第21節から31節までの11試合を9勝2分けで駆け抜け、一気にEL出場圏内の6位まで順位を上げたのである。

タレントの才能を開花させた手腕

ただこうしたシステム変更はチーム再建の一つの要因に過ぎない。ブレーメンにはもともとクルーゼ、セルジュ・ニャブリ、トーマス・デラネイといった能力の高い選手がそろっていたが、同時にヌーリが短期間で見いだした若いタレントたちが次々と才能を開花させていった。

その好例がマクシミリアン・エゲシュタインだ。前任のビクトル・スクリプニク監督の下では未完の大器でしかなかったが、ヌーリによって10番から6番のポジションへとコンバートされて一気に才能が開花した。前半戦でほとんど出場機会がなかったエゲシュタインを、ヌーリは第18節のバイエルン戦でボランチに起用。21歳のMFはその期待に応え、後半戦の快進撃を支える一人となった。同じく21歳のDFミロス・ベリコビッチも、ヌーリの下でセンターバックのレギュラーへと駆け上がっている。

成功の裏にある潔さと公平さ

EL出場権獲得の正念場となった第33節のホッフェンハイム戦、ヌーリはDFニクラス・モイサンデルの出場停止を受けて3バックから4バックへの変更を行った。しかし、結果は3ー5で敗戦。すると指揮官はシステム変更が裏目に出たことを認めた。自身の過ちを潔く認める指揮官はブンデスリーガの中では珍しいが、ヌーリのこうした性格もチームを復活に導いた要因の一つだろう。

ニャブリやデラネイといった選手でも、無条件でレギュラーを約束されているわけではない。負傷で戦列を離れてしまえば、自分の力でその座を取り返さなければならない。名前ではなく力で選手を起用する。それがヌーリのやり方だ。

バウマンSDはヌーリの手腕はもちろん、その内面も高く評価している。「期待に応えてくれたし、彼も自信をつけてくれたはずだ。とは言っても、彼のキャラクターは何も変わってないけどね」。驚異のV字回復で後半戦の台風の目となったブレーメン。ヌーリとともにシーズンの開幕を迎える来季は、きっと今季以上のことをやってのけるはずだ。